しかし、多くの在日芸能人は在特会やネトウヨが言うように、好き好んで在日を隠しているわけではないし、日本人になりすましているわけでもない。そこには、日本の芸能界の差別意識、そして事務所の意向が大きく働いている。芸能ジャーナリストがこういう。
「たしかに、日本の芸能界には在日韓国人、朝鮮人がかなりいますし、ほとんどの人はその出自を明かしていない。でも、それは本人の意向というより、事務所サイドから強制されているんです。デビューする時点で『在日だと売れないから』と、必ず日本名をつけられ、在日を隠すようにいわれる」
例えば、女優・井川遥のケースは、象徴的な例のひとつだろう。井川は無名モデル時代には趙秀恵の名前で活動をしていた。しかし、本格デビューの際に在日韓国人であることを隠し、芸名を使うことを事務所側から命じられたのだ。
しかも、その後、本人は何度か出自について語ろうとしたが、それも周囲の圧力で阻まれている。2001年には月刊「現代」(講談社/休刊)のインタビューで自ら在日韓国人であることを語ったが、実際の誌面ではそのくだりがカットされてしまうという“事件”が起こった。
「これも当然事務所の意向でしょう。本人がそれを公表したくても事務所が止めてしまう。井川は当時、家族についても語りたいという意向があったのに、それを強引にもみ消したのです」(前同)
こうした芸能界の在日差別も一時、解消されそうな気配があった。韓流がブームになって、ソニンのように最初から「在日」であることを公表し通名ではなく本名で活動する芸能人も現われたからだ。だが、それもここ最近の嫌韓ブームや右傾化、そして在特会の抗議活動によって、暗黒時代へと逆戻りしてしまった。
最近は、在日を隠すどころか、在日のタレント志望者を採用しない傾向まで出てきているという。前出の芸能関係者がこう証言する。
「隠してもネットで暴かれたりするので、事務所側もかなりナーバスになっているんです。CMに出演すると、スポンサーのところにもネトウヨが抗議をかけたりしますから、やっぱり、在日のコはどうしても敬遠しがちになる」
陰湿な差別社会化は日本のあらゆる場所に広がっているということらしい。
(林グンマ)
最終更新:2015.01.19 04:53