『パチンコがなくなる日 警察、民族、犯罪、業界が抱える闇と未来』(主婦の友新書)
先の国会で審議入りした「統合型リゾート推進法案(カジノ法案)」。早ければ今秋の臨時国会で成立すると見られており、ついにこの日本でもカジノが解禁となりそうだ。ところで、そのカジノ解禁とセットで語られることが多いのが、パチンコの換金合法化だ。
パチンコは現在、風営法で取り締まられており、特別法で認められた公営ギャンブルではない。従って、金銭を賭けることは禁じられており、現金や有価証券を賞品として提供することはできない。しかし、実際には出玉を“特殊景品”と交換し、それをパチンコ店の近くにある景品交換所で買い取ってもらうという換金行為が可能となっている。この換金方法は「三店方式」と呼ばれており、いわゆるグレーゾーンとして警察も黙認している状態だ。
カジノ法案を提出した超党派の「国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)」は、パチンコの合法化も目指しており、カジノが解禁となれば、パチンコ合法化の動きも加速すると思われる。しかし、パチンコ業界の方はというと、実は合法化を必ずしも歓迎していないという。
全国のほとんどのパチンコ店が加盟している業界団体「全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)」は7月23日に全国理事会を開催したが、そこで阿部恭久理事長は「我々はあくまでも風営法下で営業していく」と発言。少なくとも特別法を制定してのパチンコ合法化は望んでいないことがわかる。
また、同じくパチンコ店による業界団体である日本遊技関連事業協会(日遊協)も7月17日に行われた理事会後の記者会見で、「風営法の精神のもとで健全に成長させていくことが使命である」との見解を示し、換金合法化が団体の向かうべき道ではないという姿勢を見せている。
これまでグレーゾーンだった換金が合法化されれば、パチンコ業界も健全化するように思えるのだが、どうしてパチンコ店はそれを望まないのだろうか。
2011年3月に出版された“ぱちんこジャーナリスト”のPOKKA吉田氏の著書『パチンコがなくなる日』(主婦の友新書)によると、換金の合法化は「ぱちんこ企業の上場を可能にする」から、多くのパチンコ店が反対しているのだという。(註:法律用語では「ぱちんこ」と平仮名で表記されるため、引用部分では「ぱちんこ」となっている)
実は、すでにパチンコ店全体の店舗数は減少傾向にある。しかし一方で、いち店舗あたりの遊技機設置台数は右肩あがり。これが意味するのは、大手の大型店舗が新規出店し、中小店舗が淘汰されているという事実だ。著者はこれを、大手家電量販店の台頭が町の電気店を壊滅させた現状に喩え、業界内で換金合法化に反対意見が多いことの論拠する。
「つまり『換金合法化となって大手ぱちんこ企業が上場していけば、さらに優勝劣敗が加速して、中小ぱちんこ企業は生き残れない』という懸念が強くあるのだ」(同書)