他方、B元受刑者は、強姦を犯した理由を作者にこう語る。
「今振り返れば、自分は強い男なんだと確認したかったのだと思います。被害者の方には大変申し訳ないですが、他の人をコントロールしたい、支配したい、そういう気持ちから犯行に及んだと、自分では分析しています」
会社をコントロールする立場でありながらなお「他人を支配したいという願望は、普段の生活からB受刑者の中にあった」のだという。家庭では「妻に対し常に高圧的に振る舞うなど亭主関白」で、会社の中では「経営者として、営業成績が思わしくない部下を叱りつけ、ときには顧客とも激しく言い合いをしていた」B元受刑者は、酒に酔って夜道を歩いているとき、ふと、のぞきをしてみようと思ったのが全ての始まりだった。
「なぜ他人を支配することが、のぞきにつながるのか、わかりにくいでしょうね。私がのぞいていることに、相手の女性は全く気づいていません。それでいて、見られたくないものを私に見られているわけです。つまり私は、その女性を完全に自分のコントロール下においていることになります」(B元受刑者)
こうした気持ちからのぞきを重ねるたびに「自分は強い男だ、何でもできる男だ」という思いが強くなってきて、最終的に強姦をやってみようと考えるようになったのだという。
両者は最初の性犯罪に手を染めるまでの日常生活での“満たされなさ”も共通している。A受刑者は大学卒業後に就職した会社で激務に追われ、それゆえに自分の時間が取れず彼女もできない、といった状況で「犯行に至る直前は、自殺を考えるような精神状態でした。仕事で挫折し、プライベートもうまくいかない閉塞感にさいなまれていて、もうどうでもいい、死んでしまいたいと思った時期があった」ため「やがて、どうせ死ぬならなんでもやってやる、という気持ちになりました」という。
B元受刑者は、父親の存在が“他人をコントロールしたい”という願望に影響していた。「会社の創業者である父は、社員にも家族にも常に厳しかった。ときには、酒を飲んで気に入らないことがあると、妻を殴りつけることもあった。それでも父は会社の経営者として、いつも周囲から尊敬されていた。B元受刑者は、そんな父の姿に憧れた。父のようになりたいと思った」。ところが、それがB受刑者の“他人をコントロールしたい”という欲望を暴走させ、結果、性犯罪に手を染めることになったのだ。
四六時中性的なことが頭から離れず、自分は性犯罪を犯したくないのにやめることができない、という者もいる。強制わいせつを繰り返し、懲役6年の刑に服したC元受刑者は「正直に言うと、また性犯罪を繰り返してしまうのではないか、と常に不安な気持ちで暮らしています。1日24時間のうち、8時間は働いていて、8時間は寝ている。とすると、残りの8時間はずっと性的なことを考えてしまうのです」と、苦悩していた。サラリーマン時代のわずかな蓄えを、株やFXにつぎ込み、それがうまくいかない時も、性的なことを考えてしまうのだという。
「何か自分の思い通りにいかないことが出てくると、性的なことを考えてしまう。この感情とどう付き合っていけばよいのか、日々考えています」(C元受刑者)