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元“渋谷系”シングルファーザーの「お弁当本」が泣ける!

 といっても、仕事をしながら毎朝お弁当をつくるというのは、想像以上にたいへんなこと。さらに、食べたいおかずのリクエストを尋ねるだけでなく、少しでも新鮮なものを食べさせたいという思いから「自然食品店をまめにチェック」するなど、俊美はどんどんと“弁当に支配されるような日々”になっていった。親心というものかもしれないが、これでは身体がもたない。そこで俊美は「調理の時間は40分以内」「一食にかける値段は300円以内」「おかずは材料から作る」という3つのルールを導入することにした。さらっと書いているが、この3つも相当に高いハードルだろう。

 本書は、そうして俊美の手によってつくられたお弁当の写真をコメントともに紹介。たとえば、いちばん最初につくった4月のお弁当の中身は、マルシンハンバーグに紅鮭の粕漬け焼き、卵焼き、ブロッコリー、トマトと、言葉は悪いがよくあるお弁当、といった感じだ。しかし、それも5月に入ると、卵焼きに大根葉ふりかけが入っていたり、えびとズッキーニのナンプラー炒めといったオシャレな一品が登場するなど、ぐっとこなれた印象に。時を経るごとに弁当箱も増え、おかずの色合いもどんどんと美しくなっていく。なかでも目を見張るのが、卵焼きのバリエーション。「親子そろって卵焼き好き」というだけあり、ちりめんと糸三つ葉入り、しょうが昆布入り、たこと青じそ入り、じゃこ天スティック入り、ハムとゴーヤ入りなどなど、飽きない工夫がほどこされている。

 恋のためにダイエットしたいと息子が言えば、少ない量でも満腹感が出るアイデアを考えたり、寒い冬は体調を崩さないようにしょうがをメニューに取り入れたり。また、週末は地方ライブで家を空けざるを得なくても、必ず月曜の朝には戻ってご当地の食材を使ったり、12月にはクリスマスツリーをかたどったキャラ弁ふうの力作をつくったものの、「あ、今日はクリスマスツリーね。ごちそうさま」と味気ないメールが届いて意気消沈したり……。こうした毎日の記録を読んでいると、お弁当がふたりのコミュニケーションツールになっていること、そして何気ない一日一日の積み重ねが繋がりを深めていくのだということが、痛いほどに伝わってくる。

 本書の最後には、今年の春に高校を卒業した息子からの手紙が掲載されている。そこに書かれているのは、感謝の気持ちと、こんな言葉だ。

「もし僕に子供ができた時には、おいしくて優しい弁当の作り方をぜひ教えてください。僕も愛情たっぷりのおいしい弁当を次の世代につなげていきたいと思います」

「お父さんも、お父さんの弁当も本当に大好きです」──“男と男の約束”の先に待っていた、最高のメッセージ。シングルファザーの男性はもちろんだが、お弁当づくりをパートナーに任せきりの男性も、ぜひこの本を読んでみてほしい。弁当づくりとは、この上なくクリエイティブで、とびきりのラブレターなのだということが、きっとわかるはずだ。

 ちなみに、俊美は昨年、再婚をしたという。息子は「快く受け入れ、とても優しく迎えてくれた」とのことだ。
(田岡 尼)

最終更新:2014.08.21 08:06

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