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坂上忍『バイキング』打ち切りはフジ上層部による政権批判潰しだ!安保法制反対から東京五輪批判まで安倍・菅政権に異を唱え続けた軌跡


 
 だが、このように時の政権だろうと勢いのある政党の代表だろうと「忖度しない」坂上の姿勢は、フジテレビ上層部から睨まれつづけてきた。

 前述したように、昨秋には「週刊文春」(文藝春秋)に「『なんでできねえ!』坂上忍“パワハラ”に『もう限界』フジ内部調査」と題した記事が掲載され、坂上にパワハラ疑惑が持ち上がったが、このとき「文春」が報じたフジのパワハラ内部調査はそもそも坂上潰しが目的で、9月改編での打ち切りを狙って6月ごろから複数のマスコミに盛んにリークされていた。

 実際、「坂上によるパワハラ」とされたものの多くは、番組内容をめぐる対立で相手もADや下請け制作会社社員などではなく、プロデューサーやディレクターなどの責任者で、坂上とどちらが「優越的な立場」にあるのか微妙なところだった。しかも、坂上が激昂した理由は、番組内容が圧力で変更になったことなどに対して坂上が抵抗したというものだった。このとき坂上は調査に徹底抗戦し、結果パワハラ認定されることはなく、昨年9月での番組打ち切りは頓挫。むしろ番組は2時間から2時間40分に拡大され、番組名も『バイキングMORE』へとリニューアルした。

 しかも、フジの上層部は坂上の政権批判を厭わない姿勢に対し、安倍応援団を投入することで番組内容をコントロールしようとしたこともあった。

『バイキング』は過去に竹田恒泰や有本香といったネトウヨ安倍応援団も出演してきたが、『ひるおび!』の田崎史郎のように恒常的に出演することはほとんどなかった。または、前述した八幡氏の場合がそうだったように、坂上と論争となって番組に呼ばれなくなるといったこともあった。ところが、坂上の政権批判がコントロールできないため、政権に近いフジの上層部や報道局から番組サイドにクレームが相次いだせいか、コロナ下の失政続きもあり番組の安倍政権批判がより一層勢いを増していた2020年5月半ばくらいからは露骨な安倍応援団ぶりで知られる“フジのスシロー”こと平井文夫解説委員を投入。平井解説委員は田崎史郎でもしないようなデマまがいの無理やりすぎる政権擁護をたびたび展開したのだ。

 だが、坂上は平井解説委員の政権擁護に対しても番組中に反論。たとえば昨年の「GoToキャンペーン」強行について、坂上やコメンテーターらは厳しく批判したのに対し、平井解説委員が批判を封じるようなコメントをしたところ、坂上は平井氏に対して「言論封殺」「まるで政府の一員の方のような意見」と強い調子で反論し、平井氏の政権御用ぶりを批判した。

 その後、平井氏は昨年10月に菅政権の「日本学術会議」任命拒否問題をめぐって完全なデマ発言をし、後日番組は訂正・謝罪をおこなった。それを最後に平井氏は番組から消えたが、いかにフジ上層部が『バイキング』における坂上の司会ぶりを疎ましく見ていたかがわかるだろう。

 しかし、フジ上層部が坂上を厄介払いした背景には、自民党への忖度だけではなく、ネトウヨらによる抗議も影響を与えたはずだ。実際、坂上が安倍政権の批判を繰り出していた2017年には、ネット上では「坂上消えて欲しい」「偏向報道」などといったディスが溢れ返り、さすがの坂上も「結構、僕らだってね、なんかこうやっていつも政権に対してブーブー文句を言ってるとね……自民党さんを応援してないのかって? とんでもないことであって! いまのこの状況考えたら、ちょっと、まあ消去法じゃないけど、しょうがねーなって思ってる人多いと思うんですよ」などとエクスキューズをしたこともあった。

 いずれにしても、こうした自民党政権批判を嫌がったフジ上層部が坂上を切るために、『バイキング』そのものを終わらせたのんである。

 はっきり言って、いまのメディア状況のなかで、『バイキング』がなくなる損失は大きいと言わざるを得ない。

 もちろん、『バイキング』および坂上は、眞子内親王の結婚をめぐる小室圭さんへの度を越したバッシングや、パワハラや女性蔑視に対する意識の低さ、大手芸能事務所への忖度など問題も数々あったことは事実だ。だが、政権批判にかんしては他のワイドショーとは一線を画していたし、前述したように他のワイドショーが取り上げないような政権の不祥事にかんする批判的報道もこまめにやってきた。実際、政権に批判的だとされてきた『羽鳥眞一モーニングショー』(テレビ朝日)でも扱わず『バイキング』だけが取り上げるという問題も少なくなかった。

 だが、いまやその『モーニングショー』も忖度せずに政権批判をおこなう青木理らのコメンテーターが外されたことで明らかにパワーダウン、真正面から政権批判をおこなえるワイドショーは『バイキング』だけの状況だった。しかし、その『バイキング』と坂上が消えるとなれば、もはやワイドショーは死に体に等しい。

 坂上はそのパワハラ気質のせいか左右関係なく嫌われていたため、ネット上では番組終了の報に快哉を叫ぶ意見ばかりが目立つ。だが、こうしてまともな政権批判がおこなえる番組が、またひとつ消えてしまうのだ。これはけっして喜ぶことはできない現実だろう。

最終更新:2021.12.13 11:06

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