あらためて説明しておくが、マスクが感染拡大防止に一定程度有効であることは、世界中の学者や専門機関がすでに指摘していることだ。反マスクのトランプ支持者の集会の地では感染者が増加している一方、民主党地盤の州ではマスク推奨で新規感染率が低下、またほとんどの参加者がマスクを着用しているBlack Lives Matterデモではあれだけの大人数が集まっていてもクラスターが発生していない、というアメリカの例を見ても、マスクの有効性はよくわかる。
そして、飲食店がほかの場所や施設以上にマスク着用を求めるのは当たり前の話だろう。
なぜなら飲食の場がいまの日本で感染経路の最大の原因のひとつとなっているからだ。ホリエモンや淳は「どうせ食べるときに外すから」などと飲食店でマスク着用を求めることを過剰だと主張しているが、この考えじたいコロナ感染の実態や防止策に対する認識が欠如している。
飲食の場で感染が広がっているひとつの原因は、食べるときにマスクを外すため、外したまま会話してしまうからだ。
つまり、食べるときにマスクを外すからこそ、飲食店ではその状態を最低限にするよう気をつけなくてはいけない。そして、店側は、食べるときマスクを外すからこそ、ふだんきちんとマスクを着け感染に気を配っている客に来店してもらいたいと考える。
クラスターが発生すれば、飲食店は一定期間休業せざるを得ず、場合によっては廃業の可能性すらある。多くの飲食店はそのリスクと隣り合わせで、必死でコロナ対策をして自衛しているのだ。自衛といっても、別に店側のスタッフや家族だけを守っているという意味ではなく、訪れている客のことも感染から守っているのだ。
ところが、堀江氏も淳も、そんな基本的なことすらわかっていない。たとえば、堀江氏は自身の講演会でマスク着用を求めていることを突っ込まれると、〈会場で飲食は想定してないんですけど笑〉(10月4日)と述べていたが、講演で飲食できる場合はマスクを求めるつもりはないらしい。
「食べるときにはマスクとるわけだから」と言った淳も同様だ。飲食店でマスクを不要とする主張が、感染防止への効果の問題とは関係なく、自分の快・不快や手間を基準とした話でしかないことをまったく自覚していない。
しかも、淳はそうした感染対策への基本理解を欠いたまま、倒錯した主張をする堀江氏のことを「合理的」「しっかりとしたロジック」などと擁護したのだ。これは新型コロナ感染にかんする間違った認識を広め、感染防止を努力する飲食店に抑圧や攻撃を生み出しかねないものだ。あらためて強く批判しておきたい。