いずれにしても、吉本興業が世間の批判を受けて、「改革」「コンプライアンス強化」のために発足させたアドバイザリー委員会には、権力におもねる御用学者や、不正を無かったことにして出世を果たした元官僚が名前を連ねていたのだ。
これでは、吉本興業の責任をきちんと追及するような提言、改革案が出てくるはずはないし、これからも出てくることはないだろう。
もちろん、吉本がいくらお手盛りの委員会で、こうした骨抜き改革でお茶を濁そうとしても、メディアがきちんと批判すれば、状況を改善することは可能だ。
しかし、現実には、テレビもスポーツ紙もこのアドバイザリー委員会の人選や動きをまったく批判しないどころか、前述したように「日本初のエージェント契約導入」とPRに勤しんでいる。
この背景には、何度も言っているように、テレビ局が吉本興業の大株主であり、スポーツ紙や週刊誌なども吉本と癒着して完全に御用化しているという問題がある。
加えて大きいのが松本人志の存在だ。“テレビ業界の天皇”であり、芸人たちにとって絶対的なタブーである松本人志が大崎会長、岡本社長のバックについているため、メディアも芸人も、松本が怖くて物が言えなくなっているのだ。
実際、宮迫と亮の会見や岡本社長のグダグダ会見の後には、加藤浩次や友近ら芸人からも会社への批判の声が上がったため、一部のテレビ番組などでは吉本興業の体制に対する多少の批判も語られたが、松本が積極的に動き始めて以降、芸人たちも次々口を閉ざすようになった。
わずかにあったマスコミの吉本批判もどんどん声が小さくなり、逆に宮迫、亮、そして、加藤らへのバッシングのほうが強くなっていった。
賭けてもいい。吉本と反社会勢力の問題はこのまま、会社の責任は一切問われずに収束し、芸人との関係もエージェント制導入などという上辺だけの改革で、強権支配は温存されるだろう。そして、今回、上層部を批判した加藤や近藤春菜、友近、陣内智則、トレエン斎藤司などはゆっくり時間をかけながら、テレビから消されていくはずだ。
結局、マスコミの体質が変わらない限り、この国の芸能界を改革、風通しを良くすることは不可能なのである。
(編集部)
最終更新:2019.08.14 09:49