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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第37号

180時間残業代なしで働かせる恐怖の“固定残業代の繰越制度”とは! ブラック企業の「定額働かせ放題」への飽くなき欲望

 訴状には、「固定残業代の繰越制度」が違法無効であるとする、思いつく限りの理由付けを分厚く並べた。
 また、提訴に合わせて労災も申請し、無事に支給決定を勝ち取った。

  これらの甲斐あってか、裁判所も当方の主張に理解を示してくれた。
 そしてついには、被告企業が、裁判の最中に、自らこの「固定残業代の繰越制度」を廃止するまでに至ったのである。
 
 最終的にこの訴訟は和解で決着したところ、和解条項では、固定残業代の繰越制度を復活させないことを企業に約束させ、また従業員に長時間労働をさせないような体制の構築も約束させた。

 なお余談だが、被告企業では、この「固定残業代の繰越制度」の導入前には、「専門業務型裁量労働制」という制度が用いられていた。詳細は省くが、これも要するに一定額以上の残業代を支払わなくてよいというものである。
 しかし、新卒一年目のシステムエンジニアに職務上の裁量権があるはずもないため、労基署から同制度の適用について「ダメでしょ」という指導が入り、同制度はやめざるをえなくなっていた。「固定残業代の繰越制度」は、これに代替するものとして、苦心の末に編み出されたものであったと思われる。 

ことほどさように、ブラック企業の「定額使いホーダイ」への欲望は、強く、根深い。
昨年成立してしまった、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」は、この欲望がついに合法化されてしまったものではあるが、これ以外にも、ブラック企業は、今後も、違法な手段も含めてあの手この手で「定額使いホーダイ」を実現しようとしてくると思われる。
「あれ、これは実質『定額使いホーダイ』なのでは?」と思われるケースがあったら、迷わずにブラ弁に相談してほしい。

【関連条文】
割増賃金の支払義務 労働基準法37条1項

(弁護士 島田度/きたあかり法律事務所 https://kitaakari-law.com
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ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp

長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。

最終更新:2019.08.02 12:34

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