しかも、厚労省はこのあと官邸と示し合わせたような露骨な動きに出る。検討会が終了してちょうど1カ月後の10月16日、例の麻生発言が飛び出すと、厚労省は統計委員会に調査手法の変更を諮問、統計委員会がこれを承認したのだ。
この不可解さを、小川議員は本日の予算委員会でこう述べている。
「統計委員会は本来、統計法によって申請主義をとっている。各省が申請してはじめて統計委員会で審査する。ところがこの時期、未諮問審査事項という聞き慣れない概念がつくり出されている。つまり『長年、諮問していないやつはオレたちから指示するぞ』というトップダウンの形式にまでなって、結果として厚労省の検討会をすっ飛ばすかたちで結論にいたっている」
安倍官邸、菅官房長官が「カンカンに怒っ」たことで、厚労省は“答えありき”で検討会を立ち上げ、委員からは慎重な姿勢が出たものの、さらに麻生財務相の発言で政治主導の統計改革がはじまった──。どうみても、安倍官邸による政治的圧力が、アベノミクス偽装、賃金偽装を生み出したとしか考えられないだろう。
しかも、本日の予算委員会の質疑では、小川議員がもうひとつ、重要な指摘をおこなった。それは、2018年1月からの調査手法の変更において、常用雇用者の定義から日雇い労働者を外していた件だ。
小川議員は2月4日の同委でもこの問題を取り上げたが、そのときの説明によれば、勤労統計調査では月18日間勤務した日雇い労働者は常用雇用者に含めて計算をおこなっていた。ところが、2018年1月からの調査手法の変更によって、常用雇用者から日雇い労働者を除いたというのである。
その上、本日の質疑で小川議員は、日雇い労働者を含めていた場合、数字はどうなっていたかを独自に試算。2月8日に厚労省が発表した2018年の現金給与総額は1人当たり月平均32万3669円(公表値)であり、名目賃金は1.4%増、物価を勘案した実質賃金で0.2%増だったが、日雇い労働者を含めて試算したところ、現金給与総額は32万2100円、名目賃金が0.9%増、実質賃金ではマイナス0.3%減になるというのである。