「十年契約」という異例の長期契約に加え「二年縛り」で“奴隷契約”と報じられたローラも、昨年8月から所属事務所との間で独立をめぐってトラブルになっていたが、今年の4月に和解している。3月29日付のニュースサイト「SANSPO.COM」では、現在放送されているCMやファッション誌の仕事など事務所がとってきた案件はこれまで通り事務所を通し、ローラ自身がとってきた海外の仕事や香水のセルフプロデュースなどの仕事は事務所を通さないかたちで合意にいたったと報道されている。これも、公取委の指摘は無縁ではないだろう。
公取委の動きは、芸能プロダクションと所属タレントとの間にある不均衡なパワーバランスを是正する確かな一助となっていたようだ。
しかし、その一方で、別の問題も指摘されている。
たとえ法的に認められなくなったところで、プロダクションやテレビ局などが「忖度」し合って事務所を抜けたタレントの仕事を干し上げるような状況が変わらなければ、結局のところ現状のままなのではないかという心配だ。
報告書では、業界内においてネガティブな情報が出回り、その後の仕事に支障をきたす可能性について考慮するよう記されていたが、その点は今後も課題となる部分だろう。
そのような懸念が出るのには理由がある。
昨年7月に公取委が調査検討に入ったニュースを取り上げたメディアはNHKと朝日新聞だけで、他はほとんど取り上げていないのだ。とくに民放は、このニュースを一秒も報じていない。民放のワイドショースタッフが苦笑しながら語る。
「それはそうでしょう。テレビはこういう芸能プロの圧力、嫌がらせの共犯者のようなものなんですから。報道なんてできるはずがない。うちの番組では、最初から企画にもなっていません」
こういった事情がある以上、先にあげたような懸念は払拭されているとは言い難い。たとえ、契約書に明記されたかたちで移籍制限のようなものが行われなくても、事務所の言い分に従わずに移籍したら業界から干されると認識させられていれば、事務所に不満があっても行動に出ることは難しい。
確かな一歩は踏み出せたが、まだまだ課題は多そうだ。
(編集部)
最終更新:2018.06.30 09:04