そんな籾井体制という厳しい状況のもと、『あさイチ』は政治的問題に踏み込み、反戦や政権批判やNHK批判ともとれるような意見も表明してきたのだ。こうしたテーマを取り上げる際、きまって有働アナはいつもより張り詰めた表情を見せ、その緊張感は画面越しにも伝わってきた。一説には政治問題に踏み込んだあとの上層部からの眼に見えぬプレッシャーが降板に関係しているとの見方もある。
いずれにせよ『あさイチ』は、NHKに残された数少ない良心のひとつだった。いや、NHKだけに限った話ではない。前述したように民放のワイドショー、情報番組の右傾化・男権主義化が著しいなか、『あさイチ』の弱者の視点を忘れずないリベラルなスタンスは本当に貴重な存在だ。
そして『あさイチ』のこうした企画が視聴者に届き、反響を呼び、支持されてきたのは、これまで述べてきたように何より有働アナと井ノ原の存在が大きかった。
その有働アナもイノッチもそろって『あさイチ』から姿を消すことになると、『あさイチ』という番組そのものが変質してしまう可能性が高い。改憲議論も迫るいま、日本の言論状況にとっては大きな損失といえよう。
(編集部)
最終更新:2018.02.06 06:59