■「憲法改正」とどう戦うべきか
──でも、「最低限」という意味では、ついに憲法改正にまで議論が移ってきました。
ぼくはスピーチでもよく「戦後70年間、曲がりなりにも日本は平和を守ってきた」って話を入れてきたんです。もちろん、その「平和」には、沖縄への負担があるし、米軍は沖縄からベトナム戦争に行ったことやイラク戦争の給油活動にかかわってきた事実もある。全部肯定できる「平和」じゃない。けれど、それでも軍隊を戦地に送らないっていう建前があって、集団的自衛権はやらないと言ってきたわけです。それくらい守れよ、と思うんですが、それが覆されて、ついに憲法まで話が行き着いてしまった。余裕のある状況ではないと思います。
まだはっきりとはわかりませんが、最初の改憲で緊急事態条項を出してくると言われていますよね。それだって、いつまでが緊急事態なのかとか、権限の範囲だとか、ある程度、改憲のために譲歩してくるだろうし、「民進党さんもこれなら乗れるでしょ」と分断しようとしてくるでしょう。みんなが賛成しやすい、つまり反対しづらいかたちにもっていく。それが喫緊の政治課題なの? みんなが乗りやすいものにしようとすればするほど、あんまり意味のない改憲になりそうな気がするのですが。衆院法制局の試算だと1回の国民投票で約850億円かかるというけれど、そんなにかける意味あるの? という疑問も当然ありますが。
「ぼくら死ぬわけじゃないし、関心がなくなったわけでもない」
──緊急事態条項のなかでも、衆議院解散の任期延長の条項のみに絞ってくるとも言われていますね。
でも、いまの自民党の改憲草案を見るかぎり、自民党に改憲を任せるのは危険だから今回の改憲に反対だ、というのは、結構テクニカルな話だと思う。しかも、国民投票には公選法のようなルールがないから、CMもばんばん流せるし、番組を買い上げちゃってアピールもできる。……だから3分の2を獲らせたくなかったんですけど(苦笑)。
──そうしたとき、もうSEALDsはいないわけですよね。それで安保法制のときのように大きなうねりをつくり出せるのか……。
最近、取材を受けているとよく言われるんですよ、「いま解散していいんですか!?」って。ただ、ぼくら死ぬわけじゃないし、関心がなくなったわけでもない。おのおのが勝手に動いていくはずで。
それに、いまのネット社会のいい部分だと感じるのは、パッと手を挙げて出てきた人をひとりにしないところがあると思う。SEALDsだって、昨年の5月にはじめて、8月にはあんなことになったわけですから。
もちろん、いまから準備をしていかなきゃいけないと思います。憲法改正の発議から60日以後180日以内に国民投票が行われるわけですが、その日がきたときに、すぐ動き出せるようにこれからやるべきでしょう。
たとえば、「自民党支持だけど、あの憲法改正草案は無理だ」という人も、少なからずいると思うんですよ。だから、ゆるやかなネットワークみたいなものを、いまから準備するべきだとぼくは思います。いまの政治のなかで憲法改正草案の中身のどこがどんなふうにダメなのかということをきちんと整理して、身近なところでいろんな人に広げていく。