その舞台は、ワケありの男女が各々の秘密を抱えながら合コンに参加し、次第にその秘密が明かされていくという群衆劇。彼女の役は、AV女優であることを隠して合コンに参加する女の役だった。自分自身を投影した役のセリフのなかに、彼女は両親へのメッセージを込めていた。
「劇中に『両親は反対しているかもしれないけど、私はこの仕事を誇りに思っている』っていう自分で考えた長ぜりふがあったんです。もちろん、両親に舞台の内容は話してなかったんで、あれを見てもらうのは正直、一か八かの賭けでしたね」
その舞台を見て、母は泣いていた。それ以降、二人の距離は縮まったという。
「それから少しずつお母さんとも電話で話をするようになりました。舞台も毎回、見に来てくれて、そのたび泣いてました。でもことあるごとに『早く芸名を変えて、脱がない仕事をやって』って言ってくるんですよね(苦笑)」
そうは言うものの、彼女が弱音を吐くと、「いまさら、途中で辞めるなんてダメでしょ!」と叱咤激励してくれる、そんな関係になることができたと語る。
続いては、東京スポーツ新聞の記者からAV女優へと転身した異色の過去をもつ澁谷果歩。彼女が親バレしたきっかけは、なんと、プロレスラーの前田日明だったという。いったいどういうことなのか?
「もともと、私の父が前田さんのリングドクターを務めていて、家族で仲良くさせてもらっていたんです。ところがAVデビューしたとき、私の『元東スポ記者』という経歴が派手に週刊誌にスクープされて、前田日明さんにも伝わったみたいで。心配した前田さんが父親に連絡したみたいで」
父が医者で、子どもたちを幼稚園から私立のエスカレーター校に通わせるような厳格な家庭からAV女優が出るというのは、親にとっては天地がひっくり返るような衝撃的な出来事にあったに違いない。
「母から『今日、とにかく早く帰ってきなさい』ってLINEメールが来たんです。家に帰ったら仏壇に線香がたかれてました(苦笑)。母は今にも死にそうなか細い声で『澁谷果歩って知ってる?』って聞いてきたのを覚えてます」