その一方で巨人といえば、金に物を言わせた補強策でおなじみであり、だからこそ選手が育たないという側面もある。スポーツライターの小関順二氏は、著書『間違いだらけのセ・リーグ野球 パ・リーグばかりがなぜ強い!?』(廣済堂新書)でこう分析する。
「セ・リーグが交流戦や日本シリーズでパ・リーグに勝てなくなったのは牽引役の巨人、中日、阪神の先細り状態と無縁ではない。単純にパの各球団に勝てなくなったというだけでなく、そのチーム作りがマスコミや野球ファンに申し訳が立たないと思わせるものが、今も続いている。セ・リーグ牽引役のチーム作り、それは他球団の主力選手を過剰に獲得して自チームの中心に持ってくることである」
FAやトレードで他球団の主力選手を獲得するという手っ取り早い補強策に出る巨人や阪神だが、残念ながら思うような結果は出ていない。しかし、それでもこういった金満体質はなかなか変わらないという。
「買うのは実効性ではなく安心なので、この“爆買い”クセはなくならないだろう」(小関氏『間違いだらけのセ・リーグ野球』より)
とにかく“優秀な選手で補強した”という事実こそが重要であり、そうして補強することで“戦う態勢が整った”と安心してしまっているのが、巨人であり阪神なのだ。しかも“それでダメなら、また補強すればいい”という思考停止状態に陥っているため、どうしようもないのだ。
また、そういったセ・リーグの上位球団の金満体質をなかなか批判できないというよくない雰囲気もあるようだ。『間違いだらけのセ・リーグ野球』のなかで小関氏は、2015年7月21日付け毎日新聞夕刊の「パ 強さの秘密」という記事に言及している。
「多くの野球評論家はパが優位なのは昨年までは2連戦が原因だとか、指名代打の有無とか、瑣末な部分に勝因を見出そうとした。人気のあるセ・リーグを擁護することで球界全体が低調にならないように配慮する、そういうことが背景にあったのだと思う」
セ・リーグが金に物を言わせた補強ばかりをして、若手をしっかり育てられないということが、弱体化の大きな原因であることは自明であるにも関わらず、ある意味それがタブーであるかのような妙な雰囲気があるというのだ。