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小泉今日子はなぜ「劣化」しないのか? 「変化する力」「プロデューサー目線」を育んだ母親との歪な愛のかたち

 小泉今日子が綴ったこれらの言葉を受け、助川氏はこう書き記す。

〈「宙の上から自分を見るまなざし」は、「ユミさん」の要求に応えようとする、「ユミさんの母親」の視点です。そこに身を置いていたために、みずからの心身の声を、小泉今日子は(中略)聞き取れずにいたのでした。こうした「自分を外側から見る習性」は、一方ではプラスにも働いています。(中略)「お客の目線になりきって自分を観察できること」が小泉今日子の「強み」です。この「強み」は間違いなく、「頭の上の方から客観的に自分を見ていた」経験に根ざしています。
 バブル時代に各種の「過激な企画」をもちかけられたとき、冷静に「一度はやってみよう」というスタンスで彼女は応じていました。年長者に踊らされているように見えながら、踊らせる側の真意をしっかり見定めている――アイドルとしての小泉今日子のあり方は、「ユミさん」の「着せ替え人形」を務めていた姿が原点です〉

 小泉今日子の長いキャリアを振り返ってみれば、助川氏の言うような「プロデューサー目線」に裏打ちされたうえでの「変化を恐れない」姿勢が、常にファンを飽きさせず、また、その都度新たなファンを獲得してきた原動力になっていたのは事実のように思える。ただ、時折起きるスキャンダル(そのなかには、単なる恋愛沙汰だけでなく、「車の運転中に新聞配達用のバイクと接触したうえでの当て逃げ」というものも含まれている)が彼女のキャリアにほとんどダメージを与えなかったのは、小泉が大手事務所バーニングプロダクションに所属しているからという事実もまた忘れてはならないだろう。

 ただ、大手事務所に所属しているからという理由だけでは、芸能界はサバイブできない。それには、天性の才能と、たゆまぬ努力が不可欠だ。助川氏もこんなふうに指摘する。

〈小泉今日子は、次から次へと路線を変え、時代から求められるポジションに移動していきます。こうしたやり方は、真似しようとしてもなかなかできる業ではありません〉
〈アイドルから本格派歌手にイメージを変えたり、音楽畑で活躍していた人が俳優にシフトしたり――そういう路線変更は、珍しいことではありません。一つのことだけに取り組んでいたのでは、芸能人としての寿命は限られます。しかし、小泉今日子のように転身を繰り返し、その度にステップアップしていくケースは滅多にありません〉

 今後、小泉今日子はどんな「変化」を我々に見せてくれるのだろうか。
(新田 樹)

最終更新:2015.10.22 12:15

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