『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)
「大人女子」をコンセプトにした女性誌が創刊されるなど、「女子」という言葉が若い女性を指す言葉だけではなくなった昨今。しかし、そのたびにネット上では「いくつまで女子と自称するんだ?」と冷笑を含んだ声が上がる。その理論を支えているのは、「女の価値は若さにある」という社会風潮ではないだろうか。それを示すようにネット上では毎日のように、女性アイドルや女優が昔の画像と対比され、「劣化した」と騒ぎ立てられている。
たしかに女性は年齢を重ねるごとに、肌のハリや髪の毛のコシをはじめ、身体的な「若さ」を失う。しかし、失う以上に大きなものを手に入れられることを教えてくれるのが、作詞家ジェーン・スー氏の『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)だ。若さと老い、未婚女性の自由と孤独、そして面倒な女の自意識を鋭く切り込みながら軽やかに語るエッセイ集だが、端々から浮かび上がってくるのは、加齢による“図々しさ”によって自分の理想と現実に折り合いが付けられるようになる「年の功」の素晴らしさである。
たとえば、「ピンクと和解せよ。」問題。昭和の時代、ピンクは女の子らしい色とされてきたが、それゆえにピンクが苦手だという人も多かった。ジェーン氏もまさにそんな一人で、「ピンク好きを公言したり、ピンクの小物を持ったりするのは、可愛がられたい気持ちを前面に押し出しているのと同義! そんなのズルいし、そもそも恥ずかしい!」と、長い間ピンク色のものを敬遠していたという。
しかし、自分の心のうちを探ってみると、幼少のときに母親からピンクが似合わないと言われたことが、ピンク嫌悪の原因だったことに気づく。「ピンクは可愛さの象徴でしたし、可愛い子どもは愛でられた。私は可愛くなって、もっともっと愛でられたかった」と自分が長く願っていたことを受け入れるように。
さらには「四十代の背中が見え始め、自分が女であることにも慣れ、女としての記号的な性的価値が落ちて初めて、私はピンクにネガティブな感情を抱かなくなりました。ピンクが似合う女子でないことが、ようやくどうでもよくなりました。これもまた加齢による図々しさの発露かもしれません」と、ある意味女性性から解放されたゆえの開眼があったと語る。