「TIME」HPより
岸田政権が、安倍・菅政権そっくりの“報道圧力”体質をあらわにした。昨日12日発売のアメリカの雑誌「TIME」の表紙を飾った岸田文雄首相だが、電子版で公開された特集記事の見出しに外務省が文句をつけ、見出しを修正させたのだ。
当初、電子版の特集記事の見出しは「岸田首相が平和主義だった日本を軍事大国に変えようとしている」というものだったが、これに対し、外務省は「TIME」誌側に「見出しと中身が異なっているとして異議を伝えた」という。その結果、電子版の見出しは「岸田首相は平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている」に修正されたのだ。
共同通信の記事では、政府関係者が「修正を求めたわけではないが、見出しと記事の中身があまりに違うので指摘した。どう変えるのかはタイム誌の判断だ」と話しているが、記事のほうでも、岸田首相が戦後最大規模となる軍備増強を発表し、防衛予算で世界第3位となることを指摘したり、「防衛力の強化が核兵器のない世界を目指して努力するという岸田首相の公約と矛盾する」といった見方があると紹介している。つまり、「見出しと記事の中身があまりに違う」というわけではまったくない。
だいたい、当初の見出しである「岸田首相が平和主義だった日本を軍事大国に変えようとしている」というのは、正真正銘の事実ではないか。実際、防衛予算が世界第3位になる防衛費増額だけではなく、岸田首相は歴代の政権が否定してきた敵基地攻撃能力の保有や、アメリカ製の長距離巡航ミサイル・トマホーク400発の導入を決めている。紙のほうの「TIME」の表紙では、悪巧みをするような表情を浮かべた岸田首相の写真とともに「日本の選択」「岸田首相は何十年もつづく平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしている」と銘打たれているが、まさに岸田首相の政策を的確に評したタイトルと言えるだろう。
いや、見出しと中身が合っているのかどうかの問題以前に、総理大臣のインタビュー記事に対し、政府が記事の見出しやタイトルに口出しして修正させることは、編集権への不当な介入、報道圧力にほかならない。総務省の放送法解釈変更問題では安倍政権下でおこなわれてきた放送局への報道圧力が再び注目を集めたが、岸田政権も結局は同じ体質なのである。
しかも、岸田政権は今回、こうした報道圧力を国内のみならず海外メディアに対してまで振るってしまった。G7サミット開催を前に、議長国だというのに、反民主主義的な体質を世界中に晒すとは、開いた口が塞がらない。