スマートフォン版Yahoo! JAPANトップページ上部に掲載された岸田首相出演の「政府広報」動画広告
7月10日投開票の参院選選挙がきのう22日公示日を迎え、選挙戦がいよいよ本格的にスタートしたが、そんななか、岸田政権による下劣な”税金を使った事前選挙運動”がおこなわれていた。
スマートフォンでYahoo! JAPANを開くと、トップページ上部に表示される動画広告。そこに、この1週間、頻繁に登場したのが岸田文雄首相だ。動画では、冒頭から「内閣総理大臣 岸田文雄」というスーパーが流れ、木々の緑を背景に白シャツ姿の岸田首相が「岸田政権は希望する方がこどもを産み、育てやすい社会を実現します」と宣言。「不妊治療が保険適用に」「出産育児一時金引き上げに向けて努力」「仕事と子育てを両立できる社会づくり」などと岸田政権のPRをはじめる……というものだ。
不妊治療の保険適用はこれまでずっと野党が要求してきたことであり、出産育児一時金の引き上げはまだ実現していない上、出産費用が高額であることなど一時金の増額だけでは不十分という指摘がある。こんな内容で自分の手柄のように誇ること自体、どうかしているのだが、問題はそこではない。
というのも、どこからどう見ても参院選のための岸田自民党PRでしかないこの動画、左上には「政府広報」と表示されているのだ。
政府広報とは、内閣府政府広報室が手がける政府広報、すなわち宣伝、PR活動のこと。テレビCMや新聞・雑誌の広告、ラジオ番組、ネットなどのメディアを使い、国家の“考え”を国民に広く伝えるというものだ。この予算が第二次安倍政権発足以降、どんどん増額され、2014年度には約65億円、2020年度には約85億円にまで膨れ上がった。そして、岸田政権も2022年度の予算で約80億円を計上。事業仕分けによって政府広報費を削減した民主党政権時が約41億円だったから、この数字はじつに倍の額となっている。
ようするに、今回、岸田政権は、あきらかに公示前の事前選挙運動としか思えない岸田自民党PR動画を、政府予算を使って垂れ流していたのである。
しかも、同じく岸田首相が出演するかたちで、5月には「若者のワクチン接種」「ロシアのウクライナ侵略への対応について」と題した2本の政権PRにすぎない動画広告を「政府広報」というかたちで展開。いずれもライオンの広報担当の経験がある松野博一官房長官がプロデュースしたというが、今回の「子育て支援に関する岸田総理からのメッセージ」と題された動画広告はその第3弾。だが、問題なのはその広報期間だ。内閣府に問い合わせると、今回の動画広告の広報期間は、6月15日から21日までの1週間。ようするに、公示日前日というギリギリの期間だったのだ。
つまり、参院選を控えて5月から政権・岸田自民党のPRのために税金を使って広報をおこなってきたばかりか、あろうことか今回、確信犯的に公示直前を狙って動画広告を流したのだ。
税金を使い、「政府広報」というかたちで公選法を掻い潜って、事実上の自民党PR広告を展開する──。言っておくが、あの安倍晋三・元首相も政府広報を自身のPRに使ってきたが、選挙公示直前にここまで露骨なことはやっていない。岸田首相による“政治の私物化”以外、なにものでもないだろう。
その上、参院選の選挙運動における岸田首相の問題は、これだけにかぎらない。政党CMでも信じられないようなPRをおこなっているのだ。