菅首相も安倍前首相も「日本人は集団免疫を獲得ずみ」を主張するトンデモ医師に乗っかっていた
現に、菅首相は「医療崩壊」真っ只中にあった今年1月16日、大木隆生・東京慈恵会医科大学教授と面会。大木教授の専門は血管外科・心臓血管外科であり、感染症の専門家ではなく、その上、「日本が世界で最初に集団免疫を獲得できる」「コロナはインフルエンザと変わらない」「経済優先で進めるべき」などと語ってきた医師なのだが、この面会で、菅首相は「久しぶりに明るい話を聞いた」と感想を口にしたと報じられた。
安倍首相も昨年6月にこの大木教授と面会し、その後、7月末に大木教授を「未来投資会議」の民間議員に追加。さらに、やはり同じ6月には“すでに日本人は集団免疫を獲得しており年内に収束、第2波は来ない”と主張していた上久保靖彦・京都大学特定教授とも面会。面会後には「この理論が何とか使えないか」と指示までおこない、関係者をあきれさせていた(北海道新聞2020年8月23日付)。
ネトウヨ脳の安倍首相が「日本人は大丈夫なんだ」などとわめきたてている光景がありありと目に浮かぶようだが、ようするに、コロナ対策の最高責任者である安倍首相も菅首相も、専門外の医師のトンデモ理論にすがり、「経済優先」を正当化することしか頭になかったのである。
さらに言えば、“安倍首相は厚労省にPCR検査の拡充を指示していた”とする田崎氏の話も、かなり疑わしい。というのも、田崎氏自身が昨年8月、『ウェークアップ!ぷらす』(読売テレビ)に出演した際、PCR検査数が海外と比較して少ないことについてなどが話題にのぼったとき、こんなことを主張していたからだ。
「これ税金なんですよね。それだけ税金をかけるに値するかどうかっていう議論をしたほうがいい。国民の税金ですから」
PCR検査は税金をかけるに値するものなのか──。周知のとおり、田崎氏が政権の方針とぶつかるような主張をおこなうことは、まずない。つまり、PCR拡充論を潰すことが当時の官邸の方針であり、それを田崎氏が喧伝したとしか考えられないのだ。
そして、不十分ながらもようやくPCR検査の拡充に方針が傾きつつあるなか、田崎氏は安倍前首相や菅首相の責任論を矮小化し、厚労省や保健所に責任を押し付けるために、いまさら「悔しいけれども、玉川さんの言うとおりだ」などという安倍側近の発言を紹介しながら、あらためて“悪いのは厚労省や保健所”と強調したのだろう。
まったく田崎氏の御用っぷりには反吐が出るが、無論、こんな話で安倍首相と菅首相の不作為は免罪できるものではない。むしろ、検査体制の不備という安倍・菅政権の重い責任、さらには「検査不要論」をがなり立ててきた橋下徹氏や田崎氏のようなコメンテーターや、厚労省やその息がかかった専門家の主張を垂れ流すだけだったメディアの責任を問う検証が、いまこそおこなわれるべきだ。
(編集部)
最終更新:2021.12.27 03:46