すぎやまこういちらの歴史修正主義に欧米の政界やマスコミからあがった厳しい批判
もうひとつ、すぎやま氏が問題なのは、その歴史修正主義だ。すぎやま氏の極右、歴史修正主義を象徴するのが、2007年に米下院が慰安婦問題に関する対日非難決議を採択した際、米ワシントン・ポスト紙に出した意見広告「THE FACTS」だ。すぎやま氏のほか、櫻井よしこや屋山太郎、花岡信昭、西村幸祐といった極右論客からなる「歴史事実委員会」は2007年6月、米ワシントン・ポスト紙に “日本軍の強制を示す文書はない”と訴える「THE FACTS」と題した意見広告を出稿。当時、朝日新聞の取材に対して、すぎやま氏はこう語っている。
「慰安婦の方々の境遇に深く同情するが、当時の政府や軍が日本や朝鮮の女性を強制的に慰安婦にさせた事実はない。根気強く『当時の政府は強制を禁じた』という事実を官民あげて提示するしかない」(朝日新聞2007年6月27日付)
また、すぎやま氏は従軍慰安婦の強制連行だけではなく、「南京大虐殺はなかった」「南京虐殺の被害者30万人説はデタラメ」という主張もおこなってきた。同じく2007年にはワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズに1000万円を投じて「南京大虐殺はなかったという証拠」を提示した全面広告を出そうと動き、両紙に掲載を断られたこともある。
さらに、名古屋市の河村たかし市長が2012年に「一般的な戦闘行為はあったが、南京事件というのはなかったのではないか」「いわゆる虐殺はなかった」などと発言した際には、すぎやま氏は「私たちは、河村たかし名古屋市長の「南京」発言を支持します!」「自由な議論で『南京』の真実究明を!」という意見広告の呼びかけ人に名を連ねている。
従軍慰安婦の「強制性」否定や南京虐殺の「人数」を問題にする主張が、日本軍の戦争犯罪や残虐行為をごまかすための詐術でしかないことは本サイトで繰り返し実証的に指摘してきた。
また、すぎやま氏自身が「WiLL」で明かしているところによれば、「証拠」として挙げていたのは、「東中野修道先生の研究成果」に「世界に「南京大虐殺報道」をしたティンパーリが中国の中央宣伝部国際宣伝処の顧問であった」説、「「南京大虐殺」が起こったとされる一九三七年当時、南京の人口は虐殺されたとされる三十万よりも少ない、二十万人だった」説、といった「南京大虐殺はなかった」派の定番の主張ばかり。
東中野氏といえば、「南京大虐殺はまったくなかった」論の急先鋒で保守派の歴史学者からも批判される人物。著書で南京大虐殺の証拠資料や生き残った女性の証言を捏造と断定したことが名誉毀損裁判となり、東京地裁からは「東中野の原資料の解釈はおよそ妥当なものとは言い難く、学問研究の成果というに値しないと言って過言ではない」と指摘され敗訴したこともある(高裁、最高裁も一審を支持し全面敗訴)。
“南京人口少ない説”や“中国国民党とティンパーリ陰謀論”についても、百田尚樹『日本国紀』も同種の主張を展開するなど手垢のついた手法で、詳しくは既報を参照されたいが(https://lite-ra.com/2019/08/post-4936.html)、実証性を重んじる保守派の学者・秦郁彦氏がそのインチキぶりを喝破している。いずれも「証拠」「事実」と呼べるような代物ではない。