すぎやまこういちは安倍首相を礼賛、「日本は“日本軍”と“反日軍”に分かれた内戦状態」の妄想発言も
しかも、欧米では、こうした日本の右派による慰安婦、南京大虐殺否定は、ホロコースト否定論と同様、戦争犯罪を肯定する歴史修正主義として厳しく批判されている。
実際、ワシントンポストに掲載された前述の意見広告は、当然ながらアメリカの反発に油を注いだだけで、トム・ラントス外交委員長は「慰安婦制度の中で生き残った人々を中傷するものだ」と猛批判。
また、「南京大虐殺はなかったという証拠」の全面広告については、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズに掲載を拒否されている。
このとき、ニューヨーク・タイムズの広告審査部長だったスティーヴ・ジェスパセン氏がおこなった説明を、他でもないすぎやま自身が公開しているので(「WiLL」2007年8月号増刊)、少し長いが、歴史修正主義に対する欧米の姿勢を伝えるために引用しておこう。
〈一九三七年十二月に起こった南京虐殺について、私は自分が専門家であるとは思いませんが、この事件に関する一方の議論とそれに反対する側の議論との両方に詳しい本紙ニューヨーク・タイムズの歴史の専門家たちを、私は信頼しております。
彼らに調べさせた所、彼らは、この今回の広告の中で取り上げられている「事実」なるものは、大多数の学者たちが従来書いている、南京虐殺は本当に起きていたのだという長い間認められてきた見解を変えるほどのものではないと裁定致しました。
例えば、彼ら専門家たちは、(歴史家たちによって以前から承認されている)この都市の人口に対し疑問を投げかけるということは、殺害された個人の数に疑問を投げかけるのと同じようなことで、私どもの専門家の見解によれば、当時の厖大な人的損害を矮小化するものであると指摘しています。
従いまして、公認された諸事実に疑問を投げかけるようなものだと私どもには思えるこのような広告を掲載することは、お断り申し上げたいと思います。
この広告に書いてあるような供述(報告)が、もし信頼できる新聞や雑誌に、新たに発見された証拠として載せられているのであれば、是非お知らせください。〉
「当時の厖大な人的損害を矮小化するもの」という掲載拒否理由からもあきらかなように、この国ではまかり通っても、ひとたび海を渡ればこうした歴史修正主義は許されないものだ。
そして、こんな主張を繰り広げてきた人物の作品を、なんら反省もないまま、オリンピック・パラリンピックという世界中の人が参加する大会開会式の入場行進曲に使用するなど言語道断だと言わざるを得ない。それは五輪組織委や日本政府、ひいては日本社会全体がこうした歴史修正主義や差別排外主義を許容していることになるからだ。