73億円も予算をかけながらテスト大会でテストできず 試したのは10人強だけ
政府は東京五輪の観戦を目的に海外から入国する観戦客や選手団などの入国前から出国後までの健康管理を目的としたアプリを準備。このアプリをスマートフォンに入れれば、入国後14日間の隔離措置が必要なしになるというシロモノだったのだが、ご存知のとおり、海外からの観戦客は入れないことが決定。アプリが必要な対象者数は数万人に限られることになりそうだが、なんと政府はこのアプリの開発・運用などに総額約73億円という巨額の予算を計上している。
このアプリ問題を今年2月に国会で取り上げた立憲民主党の尾辻かな子衆院議員は「危険すぎないか」と疑義を呈し、皮肉を込めて「神アプリ」と呼んでいたが、不具合の連続でまったく機能していないとも言われる接触確認アプリ「COCOA」の一件を見ても、このアプリが政府の想定どおりに機能するのか不安しかない。
だが、そうした不安をさらに増幅させる、杜撰極まりない新事実が発覚したのだ。
5月21日におこなわれた衆院厚労委員会で、尾辻議員が「仕様書を見ると(このアプリを)テスト大会で使うということになっていた」と指摘。「いつ、どのテスト大会で、何人が使用したのか。そのときに不具合はあったのか」と質問をおこなったのだが、時沢忠・内閣官房内閣審議官はこう答弁した。
「これまでに、東京オリンピック・パラリンピック競技大会のテストイベントにおけるテスト、これはおこなっておりません」
オリパラのテスト大会でこのアプリを使用すると説明されてきたのに、なんとそれがおこなわれていない──。時沢審議官は「必要なテストは鋭意進めているところ」「東京五輪組織委員会の一部関係者に一部の機能についてテストしていただいた」「順次テストする機能や対象を増やしていく」などとも答弁したが、実際に選手団が使用しなければまったく意味がまったくない。
しかも、このアプリのテストをおこなったという関係者の人数は、たったの「10人強」だと言うのである。
このアプリに73億円もの税金を投入していることもありえないが、さらには正常に機能するかどうかを確認する場であったはずのテスト大会で使用せず、いまだに組織委の10人強がテストしている段階でしかないとは……。こんな体たらくなのに、菅首相は「安全安心の開催実現」などと言っているのである。完全に詐欺ではないか。