変異株死亡者情報の隠蔽は、緊急事態宣言の解除の妨げになるからではなかったのか
しかも、この変異株死亡者情報の隠蔽の背景には、極めて政治的な理由があった可能性が高い。それは、緊急事態宣言の解除に影響を与えるのを避けたかったという理由だ。
実際、大阪府が死亡者の変異株感染を確認したのは2月25日だというが、吉村知事は2月1日の段階から緊急事態宣言の解除に向けて独自の緩い基準を定めることを表明するなど宣言解除に前のめりで、23日には兵庫・京都とともに28日の解除を国に要請。菅義偉首相は26日に2月末での解除を表明した。もし25日に国内初となる変異株の死亡例を大阪府が公表したならば、関西圏の宣言解除に不安が高まり、批判の声があがったことだろう。
そして、「国内初の変異株感染者の死亡例」という事実を隠蔽し、宣言の前倒し解除に持ち込んだ吉村知事は、宣言解除にともない3月1日には重症病床の確保数を215床から150床まで減らすことを各病院に通知。そうして医療崩壊を招くという現在の事態にいたってしまったのだ。
このように、事実の隠蔽までおこなって変異株に対応するための体制づくりはおろか重症病床まで削減していた人物が、自身の責任には言及することもなく、逆にいまごろ変異株の猛威をスケープゴートにして「私権制限」を叫び、責任を法律や国民に転嫁しているのだ。無茶苦茶にもほどがあるだろう。
ところが、ネット上では吉村知事の口車に乗せられ、責任追及もおこなわれないまま「私権制限は必要だ」という意見が広がっている。もちろん、これに菅政権が乗っかるのも時間の問題だろう。
しかし、明石市の泉市長が指摘したように、病床確保というやるべき仕事もできない首長や総理が私権を制限するなどということは「政治家の責任放棄」にほかならないのだ。これ以上、吉村知事の論点ずらしや責任逃れに手を貸してはいけない。
(水井多賀子)
最終更新:2021.05.02 07:51