“黒い人脈”報道の福田富昭レスリング協会会長も神社本庁の利権に関与か
つまり、今回の東京地裁による神社本庁の全面敗訴判決は、稲氏らが法廷でこうした不正土地取引の実態を証言し、田中総長、内田会長らの背任行為の立証を積み重ねてきた結果なのだ。
しかし、疑惑解明はこれで終わりではない。というのも、今回の判決はあくまで、稲氏らの不当解雇を無効とする根拠として、「背任行為があったと信じるに足る理由があった」とされただけで、その背任行為の全貌が明らかになったわけではないし、田中総長も打田会長もなんら責任をとっていないからだ。
実は、田中総長は、稲氏らが訴訟を起こした約10カ月後の2018年9月、神社本庁の役員会で、辞意を表明したと報道されたが、その後、すぐに撤回していまも総長の椅子に居座っている。
この辞意撤回は、辞任をきっかけに不動産問題だけでなく、数々の疑惑がドミノ式にクローズアップされ、責任が波及していくと周囲に説得されたからではないかといわれている。
実際、不動産不正取引は神社本庁をめぐる疑惑の氷山の一角でしかない。神社本庁の外郭団体・日本文化興隆財団をめぐる季刊「皇室」の販売利権もその一つ。前述したように、神社本庁の不動産を格安で購入して大儲けしたディンプル社の事務所には、同じ高橋氏が代表者をつとめるメディアミックス社が入っており、同社は、季刊「皇室」の販売を代行していた。販売代行といっても、神社関係への定期購読や直販を担当しているだけで、販売利益の一部がほぼ何の苦労もなく同社に流れる仕組みになっていたのである。
そして、問題なのは、このメディアミックス社の創業者で大株主だった人物が。2018年の2月まで、「皇室」の事実上の発行元・日本文化興隆財団の理事を務めていたことだった。
その人物とは、福田富昭氏。パワハラ問題で大揺れに揺れた日本レスリング協会の会長をつとめている“アマレスリング界のドン”として有名な人物で、2018年4月には「週刊文春」(文藝春秋)で山口組元最高幹部との“黒い人脈”を追及された。
こんな人物が神社本庁の外郭団体の理事を務めていたというだけでも驚きだが、福田氏はしかも、自分の息のかかった会社でその団体の発行する雑誌の直販を独占して利益をえていたのだ。これは、利益相反に当たらないのか。