泥沼強行は菅首相の意向!「首相が『撃ち方やめ』と言うまで何でもやる」と政府関係者
組織委の武藤敏郎事務総長は「できる限りの簡素化を試みているが、この数字になった。ただ、これをコストと見るか投資と見るか、だと思う」「日本国内では開催できれば、4、5兆円規模の経済効果があると試算されている。私はポジティブなところを見ていきたい」などと釈明したが、これは完全なまやかしだ。
そもそもコロナ感染下で開催を強行したとしても、そんな経済効果がもたらされるはずはない。むしろ五輪を強行すれば、運営上も財政的にも破綻する可能性が高い。
というのも、22日発表された予算でも想定しているチケット収入は満席が前提だからだ。もし観客制限をすれば、それがそっくり赤字になり、瞬く間に資金不足に陥ってしまう。
しかも、信じられないのは、組織委がいまも競技会場で活動する医師・看護師らを無償のボランティアとして1万人以上、集めようとしていることだ。22日の予算計画発表で医師や看護師をどうするのかという質問が出たが、武藤事務総長は「当初計画と変わらず原則無償で依頼する」と語ったという(東京新聞)。
新型コロナで医療現場が逼迫し、医師や看護師の離職者が急増しているというのに、組織委はいまなお無償で五輪のほうに、1万人以上も動員をかけようというのだ。国民の健康や生命より東京五輪の開催を優先しようとしているとしか思えない。
それにしても、政府はなぜ泥沼化必至の五輪強行にここまでこだわるのか。朝日新聞が12月はじめ、「首相が『撃ち方やめ』と言うまで、やれることは何でもやる」という政府関係者のコメントを紹介していたように、背景にはもちろん菅首相の強い意向がある。五輪を最大の政権浮揚策として位置付け、五輪後の解散総選挙で政権を盤石にするともくろむ菅首相が、観客を入れての開催強行にこだわっているため、政府全体が引くに引けない状況に陥っているのだ。
そもそも、今年3月の時点で東京五輪を中止や安全な2年延期でなく、1年延期で強行した背景にも、安倍首相が自分の任期中にオリンピックをやり、政権再延長につなげるという目論見があった。
そういう意味では、この国民の健康や財政無視の五輪強行は、安倍─菅と続いてきた行政私物化政権の本質がモロに出たものと言えるだろう。
(野尻民夫)
最終更新:2020.12.27 07:36