首相官邸HPより
1000人に迫る勢いの東京の感染者、そして感染力の強い変異種の登場……。新型コロナウイルス感染拡大が今年の春以上に深刻さを増しているなか、専門家のあいだでもいよいよ東京五輪の開催を絶望視する声が広がり始めた。
「我々が取材すると、多くの専門家がオフレコで『五輪はもう無理』と言っている。表立って言うと政府に睨まれるので、『五輪を実現するためにも、感染を抑えないと』としか言わないが、年明けになったら公言する専門家も出てくるのではないか。水面下では、複数の感染や公衆衛生の専門家が政府に中止の提言をしようとする動きもあるようだ」
(全国紙厚労省担当記者)
実際、分科会の尾身茂会長も「週刊文春」(2020年12月31日・1月17日合併号)の池上彰との対談で、池上から「今のままではオリンピックを開催できないということですね」と聞かれて、「最終的に来年の春には、政府は決断しなければなりません」と否定しなかった。
また、厚労省のアドバイザリーボード委員で強い発言力をもつといわれる和田耕治・国際医療福祉大学教授もツイッターでこうつぶやいていた。
〈このままでは1月12日のGo to 再開も難しそうですが、それは伝わっているのでしょうか。。オリパラもどんどん準備ができなくなっているのですが。。 もう少し中長期の想定をしていただき、対策をした場合としない場合を示す必要があったのか。〉(12月25日)
コロナ対策の専門家だけではない。実は、五輪を推し進める立場の東京五輪組織委員会からも悲観論が出始めている。「スポーツ報知」(12月25日)によると、複数の理事が「五輪を開くには状況が悪すぎる。不安と心配の方が大きく、国民の賛同が得られない」「このままでは五輪の最も大事なフェアプレーの精神を無視する形になってしまう」などと、開催が厳しいとの見方を示しているという。
当然だろう。コロナは国内の感染が深刻化しているだけでなく、世界中で感染が再拡大しているのだ。安倍前首相はじめ政府は「ワクチンができる」などという楽観論を垂れ流してきたが、東京五輪までに参加国の大半にワクチンが行き届くなんてことはありえない。
仮に日本で感染が収束したとしても、多くの国で感染が収まっていなければ、開催はできない。現段階で五輪出場枠の40%以上が固まっておらず、選考会を開けない競技や国も多い。
いずれにしても、無理やり強行すれば、感染や準備不足で大会が大混乱に陥る可能性が高く、五輪開催なんてほぼありえない。むしろ、中止の決断が遅れれば遅れるほど、予算がどんどんかさんでいくのだから、政府や組織委は一刻も早く中止の決断をすべきだろう。
ところが、政府や組織委がやっていることはまったく逆だ。あくまで開催強行の方針を変えず、ただでさえ膨大な予算を「コロナ対策」「延期で人件費がかさむ」などとしてさらに膨れ上がらせている。
組織委は22日に、予算計画を更新(第5版)したが、その金額はなんと1兆6440億円、招致時の予算の2.25倍、ロンドン五輪を抜いて五輪史上最高に達した。
しかも、驚いたのは開閉式の予算だ。組織委は同日、開閉会式を簡素化するため、野村萬斎や椎名林檎ら7人のアーティストによる総合演出チームを解散。リオ五輪で「安倍マリオ」を演出した電通出身のクリエイティブディレクター・佐々木宏氏を新たな責任者とした。ところが、「式典を簡素化する」「華美なものしない」といいながら、同じ日に発表された予算計画をみると、開閉式の予算は大会開催決定時の2倍近く、165億円になっていたのだ。