滝会長の文化功労者の選考理由がしょぼすぎる 「ペア碁の普及」まで
実際、客観的に見ても、滝会長が文化功労者に値する業績をもっているとはとても思えない。前出の広告代理店「NKB」のHPによれば、滝会長が文化功労者に選ばれたのは〈パブリックアートの普及や「1%フォー・アート」の提唱、食文化の振興、ペア碁の普及、未来を担う若者の文化活動の支援など、長年にわたり文化・芸術活動に多大な貢献を果たしたこと、その支援と振興に力を注いできたことが評価され〉たのだという。
しかし、その内容はあまりにしょぼいものだ。たとえば、「食文化の振興」は「ぐるなび」の立ち上げと経営のことを指すのだろうが、「ぐるなび」は飲食店から広告を集めるためのメディアに過ぎない上、数年以上前からすっと「食べログ」の後塵を拝し、経営が低迷。2021年3月期の連結最終損益が95億円の赤字になる見込みであることが明らかになったばかり
また、パブリックアートの普及は、滝会長が理事長を務める「公益財団法人交通文化協会」が行なっているものだが、もともとは先代から引き継いだ事業で、この手の活動をしている実業家なんて山ほどいるだろう。美術を学んでいる学生への奨学金制度などにしても、そうだ。ちなみに、同協会が発行している冊子「くれあーれにゅーす」Vol.10(2014年)では、菅首相と滝氏が対談をおこなっている。
あげくは「ペア碁の普及」って……たしかに、滝会長は2人1組で打つ囲碁を普及させる「日本ペア碁協会」を立ち上げているようだが、もちろんブームにもなにもなっておらず、ほとんどの人はその存在すら知らないのではないか。
とにかくどれをとっても、文化功労者の理由になるとはとても思えないものばかり。というか、先に文化功労者にするという決定があって、その理由を後付けで列挙した気配さえ漂っている。
実際、取材してみると、文科省周辺からは「滝会長の文化功労者は杉田和博官房副長官に押し付けられた人選に可能性が高い」という声が聞こえてきた。
杉田副長官といえば、日本学術会議問題で名簿から6人の学者を外した張本人と見られているが、実は文化功労者絡みの人選でも、過去に圧力をかけていた。文科相が候補者の選考を文化審議会に諮問し、その候補者から文科相が決定するのだが、その文科省の事務方トップだった前川喜平・元文科事務次官が、証言したのだ。
次官在任中の2016年、その文化審議会の人選において、大臣の了解が出ている委員の候補案を杉田官房副長官に持っていったところ、「好ましからざる人物」「この候補は任命するな」と言われ、候補者2人の差し替えを要求されという(TBS『news23』10月9日放送)。
つまり、今回は逆で、杉田官房副長官から滝会長を候補に入れるようあらかじめ指示があったのではないか、というのだ。だとすれば、もちろんその背後には菅首相の意向があったということになる。