公安を使って政権に批判的な者を監視・排除する安倍・菅官邸
今回、日本学術会議に任命拒否された6人は、安保法制や共謀罪といった安倍政権の政策を批判してきた学者だが、杉田官房副長官による学者の言論監視・排除も今回がはじめてではない。
前述の前川喜平氏は、文科事務次官時代の2016年、文化功労者や文化勲章受章者を選ぶ審議会の人選において、大臣の了解が出ている委員の候補案を杉田官房副長官に持っていったところ、「好ましからざる人物」「この候補は任命するな」と言われ、候補者2人の差し替えを要求されたことを証言(TBS『news23』9日放送)。本サイトで2017年に掲載した作家・室井佑月との対談でも、「安保法制に反対する学者の会議に入っているから外せ」と指示されたと語っている(既報参照→https://lite-ra.com/2017/09/post-3473.html)。
このように杉田官房副長官は、安倍政権時代から公安警察を使って、政権に批判的な官僚、ジャーナリスト、学者を監視、排除してきた張本人なのだ。
杉田官房副長官の関与が確定的になったことで、あらためてハッキリしたのは、日本学術会議の任命拒否問題も、ようするに、こうした菅首相・杉田官房副長官コンビによる公安案件の延長線上にあるということだ。
警察官僚を重宝してきた安倍・菅官邸がそのルートを使って官僚や学者、ジャーナリストを監視し、政権を批判している者や不満を持っている者たちをあぶり出しているとなると、それはもはや恐怖支配というほかない。
そして言うまでもなく、誰が“反乱分子”かは、監視活動によって初めてわかる。政府による監視は、想像よりも広く実施されていると考えたほうがいい。
しかも、これは何も官僚や学者だけに限った問題ではない。たとえば、共謀罪が成立したことで、一般市民に対する警察当局の監視活動にもお墨付きが与えられた。また安倍政権は2016年にも通信傍受法(盗聴法)を改正・施行し、法的な監視権限を強化した。盗聴法改正、特定秘密保護法、共謀罪は、警察官僚(とりわけ公安関係者)らが以前から成立を熱望していたといわれているが、こうした捜査権限の底なしの拡大を許した先にあるのは、市民のプライバシーが政府に筒抜けとなる監視社会・警察国家にほかならない。