安倍前首相ですらやらなかった露骨な人事介入も平気でやる菅首相
言っておくが、日本学術会議は2017年3月にも軍事研究を否定した過去の声明を継承するとした新声明を出すなど、軍学共同を進める安倍政権に釘を刺したこともある。しかし、この年の秋におこなわれた任命においても、安倍首相は日本学術会議が推薦した新会員を任命していた。つまり、あの安倍首相でさえ、今回のような人事介入はおこなわなかったのである。
それを、「安倍政権の継承」を謳う菅首相は、総理就任後すぐに、安倍政権の政策に批判的だった学者の任命をおこなわないという露骨な人事を実行したのだ。
しかも、本日午前の官房長官会見でもこの問題が取り上げられたのだが、加藤勝信官房長官は「直ちに学問の自由の侵害ということにはつながらないと考えている」などと言い、「結果の違いであって、これまでの対応の姿勢に変わりはない」「学術会議の目的において、政府側が責任を持って(人事を)おこなうのは当然だ」などと開き直ってみせたのだ。
菅首相といえば、総裁選の段階から官僚の人事について「私ども、選挙で選ばれてますから、何をやるかという方向が決定したのに反対するのであれば異動してもらいます」などと堂々宣言。“異論を唱える者は排除する、弾かれたくなければ忖度しろ”とその強権性を露わにしてきたが、官僚のみならず、政府から独立した機関の人事にまでさっそく手を伸ばしたのだ。
だが、これは十分予測できた事態だとも言える。というのも、安倍政権下で進められた人事介入も、官房長官だった菅首相が実行してきたからだ。
その最たる例が、「賭け麻雀」問題で辞任した黒川弘務・元東京高検検事長をめぐる人事だろう。