コロナ分科会の委員が「度重なる天災ごとに中小企業へ支援するのは過保護」と主張
東日本大震災からまだ2カ月しか経っていない2011年5月、政府の諮問機関などにも参加したことのある経済学者が中心になって「震災復興に向けての3原則」なる共同提言が発表された。ところが、そこでは、復興支援よりもコストの問題をクローズアップし、国債に頼るやり方を「ツケの先送り」と批判。〈震災・津波の被害を国民全体で支援する、というためには、全国の、いろいろな年齢層、いろいろな職業の国民が薄く広い負担(増税)に 応じてもらうことが必要だ。国民全員が少しずつ生活水準を引き下へる覚悟がいる。〉として、「復興連帯税」の導入を主張していた。そして、この提言が引き金のひとつになって、実際に復興特別税が導入されることになった。
今回、分科会のメンバーに選ばれた大竹文雄氏と小林慶一郎氏はともに、この共同提言の強力な賛同者なのだ。
なかでも小林氏はゴリゴリの増税論者で、当時、この共同提言に〈復興連帯税は復興後に廃止するのではなく、社会保障財源の恒久税にスムーズに 移行して継続するべき〉とわざわざ付言し、またコラムで〈災害を受けて国民の結束が高まり、復興支援への合意が得られやすい現在は、政治的には増税の好機である〉とまで書いていた。
しかも、新自由主義者らしく、弱者の救済や支援よりも市場の活性化を優先する。小林氏は今回のコロナ対策でも3月、所属の東京財団政策研究所として8項目の提言を発表しているが、そこでは、中小企業への支援策を否定するような主張を展開していた。
〈「雇用の7割程度、付加価値の5割以上」を占める中小・零細企業への支援は不可欠とさ
れる。しかし、度重なる天災・自然災害ごとに中小企業へ支援するのはややもすれば過度な保護になり、新陳代謝を損ないかねない。〉
2人は諮問委員会からのメンバーだが、とにかくこんなゴリゴリの増税論者、弱肉強食を肯定する新自由主義者が専門家会議に変わる分科会に入っているのだから、コロナ特別税の導入というのは決して絵空事とは言えないだろう。
メディアの動きも気になる。6月頃から、辛坊治郎や杉村太蔵など、ワイドショーの司会者やコメンテーターがやたらと、財源を国債に頼ることの危険性を指摘する発言を口にし始めているのだ。
「しかも、その言いぶりは、すべて将来世代にツケを回すというもの。財務省がメディア関係者に“ご説明”に回って、増税のための世論作りを始めている可能性もあります」(全国紙経済部記者)
ドイツは消費税減税の方針を打ち出したが、日本の国民に待っているのはまったく逆で、コロナ禍による生活苦に追い打ちをかける増税なのかもしれない。
(編集部)
最終更新:2020.07.06 07:52