首相官邸HPより
「秋の解散総選挙」説にともなって、最近、永田町でよく聞くのが「安倍首相が解散の前に消費税減税を打ち出すのではないか」という解説だ。政権維持のための人気取りとはいえ、本当に消費税を減税するならば、コロナで疲弊し切った国民にとっては朗報と言えるだろう。
しかし、その裏で、安倍首相はまったく逆のことも目論んでいるようだ。7月1日、官邸の安倍首相を石原伸晃元幹事長、塩崎恭久元厚労相、根本匠前厚労相の3人が訪ね、40分にわたって会談したのだが、そのテーマが「増税」だったのだ。
会談後、石原氏が語ったところによれば、3人が「(コロナで)多額の財政支出を行ったが将来世代につけをまわしてはいけない」と、今後、税収を増やす施策などを検討していくよう要望。安倍首相と意見を交わしたという。
国民や企業がこんな窮状に陥っている真っ最中に、「増税」って、いったいこの政治家たちはどういう思考回路をしているのか。「2ちゃねる」の開設者で、現在はフランス在住の西村博之氏がこの会談を報じたNHKのニュースをRTして、〈新型コロナウイルス禍の先進国で与党が増税の話をしてるの見るのは、日本が初めてです。率直に「頭大丈夫?」とか思っちゃいました。〉とツイートしていたが、そのとおりだろう。
しかも、問題なのは、この「増税」が石原、塩崎、根本という、政治センスのない苦労知らずの2世、3世議員トリオが一方的に持ちかけただけ、ではなさそうなことだ。
「安倍首相と石原さん、塩崎さん、根本さんの4人は、若手議員の頃に『NAISの会』を立ち上げて以来の深い付き合いです。もし、安倍首相に増税の意思がまったくなかったら、訪問の前に電話するなどして『いま、そんなことを持ち出さないでくれ』と断っていたはず。それをわざわざ会って、40分も会談したというのは、むしろ、内閣にいない3人に増税の観測気球的な役割を演じさせたんじゃないかという気がしますね。実際、政府内ではすでに、コロナ対策の財源として、東日本大震災の復興特別税と同じような、コロナ特別税を導入するという増税プランが議論されています。とくに財務省は『膨大なコロナ対策費がかかるうえ税収が未曾有の規模で落ち込む、このままいくと財政破綻する』としゃかりきになって、増税を政治家に働きかけています」(全国紙・官邸担当記者)
この状況でコロナ特別税? 信じがたい話だが、実は最近、政府が特別税導入を検討をしていることを物語るような人事もあった。
それは、西村康稔コロナ担当相が7月3日、専門家会議を廃止して、かわりに発足させることを発表した「新型コロナウイルス感染症対策分科会」のメンバーだ。
周知のようにこの「分科会」には、これまでの感染対策の専門家だけでなく、経済の専門家を複数入れたことから「自粛の重要性を説く感染専門家を抑えこもうというもの」「感染防止より経済優先の安倍政権の姿勢を表している」と批判が集まっている。しかし、その「経済の専門家」の顔ぶれをみると、懸念されるのは「経済活動再開を推進」どころではなかった。
「分科会」に入った経済学者は、大阪大学大学院経済学研究科教授の大竹文雄氏、東京財団政策研究所研究主幹の小林慶一郎氏だが、2人とも、財政規律派、増税論者として知られる。しかも、東日本大震災のときに、「復興のための増税」を主張していた。