官邸周辺では“共同声明参加を拒否させたのは今井補佐官”の情報が流布
ようするに、米英からの共同声明への参加打診を拒否したというのが事実であるために、それを真っ向から否定もできず、そのかわり「日本が中国に配慮している」という疑念を打ち消すためにこうした記事を御用新聞の読売に書かせたのではないのか。
また、9日になって米国務省のオータガス報道官が「日本は共同声明に参加していないが、中国の国家安全法制に対して強く発言してきた」「香港の民主的な価値観や自由で開放的なシステムを維持すべきだという日本の鋭い呼びかけを歓迎する」というコメントを出したと報じられたが、これも菅官房長官とまったく同じで、米側が日本に共同声明の参加を呼びかけたかどうか、それを日本が拒否したかどうかには一切ふれられていない。しかも、わざわざ参加していないことも言い添えている。
全国紙の政治部記者も、この間の政府と官邸の動きについてこう解説する。
「アメリカ国務省報道官の菅官房長官そっくりの玉虫色コメントも、日本側から頼み込んで出してもらったんでしょう。あの菅官房長官の姿勢をみると、共同声明への参加を呼びかけられ、拒否したのはほぼ間違いない。官邸内でも、“非公式に打診があったが、影の総理といわれる今井尚哉首相補佐官が断らせた“という情報が流れていますね。今井補佐官は経済目的で中国との関係を強めたい経産省の意向を受けて、中国の一帯一路構想やAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加にも積極的。2017年に二階俊博幹事長が訪中した際には、親米タカ派の谷内正太郎国家安全保障局長(当時)が担当した安倍首相の親書を書き換えるよう指示したとされるほどですから、さもありなんです。安倍首相も今井補佐官の言うことにはほとんど逆らいませんしね。ただ、これが明らかになると、安倍首相の支持基盤である右派からの猛反発が起きかねない。それで、安倍応援団を使って必死に否定させているのでしょう」
いずれにしても、はっきりとしていることは、日本政府および安倍官邸は、共同の「米英からの共同声明の打診を拒否」という記事内容に対し、何ひとつ明確に否定していない、できていない、ということだ。
にもかかわらず、ネット上では何の検証もおこなわれないまま、共同のこの記事はネトウヨや極右議員らの声の大きさによって「デマ」「誤報」として流布されているのである。
いや、問題はそれ以前だろう。そもそも政府が否定したとしても、それは事実でないということではない。政府(とくに安倍政権)のこれまでのやり口を見ればわかるように、都合の悪い裏側や不正については、平気で嘘を強弁して、事実を否定してみせるのが権力の常套手段なのだ。それを政府が否定したからといって、デマ扱いしていたら、それこそ不正や裏側を暴く報道が封じ込められてしまう。
マスコミの報道内容をきちんと検証していかなければならないのはもちろんだが、こうした権力の思惑に乗っかった「デマ認定」こそ、マスコミの誤報なんかよりはるかに危険なものであることを、私たちは強く認識しておく必要がある。
(編集部)
最終更新:2020.06.10 12:59