野田洋次郎Twitterより
新型コロナ感染症対策にともなう自粛要請のあった2月26日から現在まで、興業を中止したことによる補償のいっさいない状況が続き、イベント業界に携わる人たちからは悲鳴があがっている。24日に政府ヒアリングに参加した、「ぴあ」の矢内廣社長も「自粛要請を受けて自らの判断で中止・延期した人たちへの補助をきちんとしてほしい」と訴えていた。
28日の安倍首相の会見では苦境にあえぐイベント業界への補償策が語られるかと思いきや、その期待はことごとく裏切られることとなった。
会見のなかで安倍首相は「人びとの心を癒やす文化や芸術、スポーツの力が必要です。困難にあっても文化の灯は絶対に絶やしてはなりません」などと美辞麗句を並べつつも、質疑応答で「イベントの自粛要請に応えているところには必ず補償すべきでは」と問われると、「損失を税金で補填することはなかなか難しい」「そうではない補償の仕方がないかということをいま考えているところ。給付金も考えていきたい」と発言した。
この期におよんで、まだ補償策が出なかったのだ。「文化の灯は絶対に絶やしてはなりません」と本当に思っているのであれば、そのためにすべきことがあるのは明白だ。
自粛を呼びかけるのであれば、補償もセットでなければ、とてもではないが耐えられない。精神論でなんとかなる問題ではないのである。
しかし、残念ながら、これは、安倍首相だけではなく、文化・芸術に関わる権力者たちに共通する意識のようだ。
27日、文化庁長官の宮田亮平氏は「文化芸術に関わる全ての皆様へ」というメッセージをホームページ上で公開した。
そこには、〈この困難を乗り越え、ウイルスに打ち勝つために、文化庁長官として、私が先頭に立って、これまで以上に文化芸術への支援を行っていきたいと考えています〉という威勢のいい文章が書かれていたものの、具体的な補償策についてはいっさい言及がなく、〈明けない夜はありません! 今こそ私たちの文化の力を信じ、共に前に進みましょう〉というポエムで締めくくられていた。
これに対し、エンターテインメントやアートに関わる人たちはいっせいに怒りの声をあげた。
King Gnuの井口理は〈いや、仮にも芸大の学長だった人からこのコメント出しは虚しいよ!!すでにみんな1ヶ月仕事を失ってるんだから一刻も早く補償をしましょうよ!!!〉とツイート。この期におよんでなお補償策を出さない姿勢に怒りの声をあげた。ちなみに、井口は、宮田氏がかつて学長を務めていた東京藝術大学の卒業生である。
RADWIMPSの野田洋次郎も文化庁長官のメッセージに対して〈ふぁ??〉とツイート。あり得ない精神論の押し付けに呆れ返った様子を見せた。
また、この危機的な状況に対して、音楽業界からは動きが出てきている。
「SaveOurSpace」という署名活動が行われた。この署名は、自粛要請のあった2月26日から、政府が収束を発表するまでの間のイベント自粛にともなう助成を国に求めるものだ。
「SaveOurSpace」には、水原希子、坂本龍一、後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)、横山健(Hi-STANDARD)、TOSHI-LOW(BRAHMAN)、
SKY-HI、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、Saori(SEKAI NO OWARI)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)といった面々が賛同人として名を連ね、ツイッターなどを通じて署名を呼びかけている。
メジャーなアーティストも参加した呼びかけはどんどん広がっており、3月30日17時の時点で署名は20万筆にまで到達したという。
そのなかでも、TempalayのAAAMYYYは、署名呼びかけとともに〈なぜ音楽業界だけとか税金で助成金は変という意見があるけど、その日本人の乏しい考え自体が日本の文化芸術への理解欠如の原因である。これは世界からみたら本当に恥ずかしい。ちなみに苦境にあるどの仕事にも助成金が出るべきで、職種問わずこのおかしな日本の事態に全員声を上げるべきなのは確か〉とのコメントもツイッターに載せている。