厚労省ツイートのほうが「デマ」だとあきらかにした6日放送の『モーニングショー』
新型コロナ対応の後手後手ぶりに批判が集まっている政府が、ここにきて言論弾圧に乗り出してきた。始まりは一昨日5日、厚労省の公式ツイッターが『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の報道内容に反論、あたかも同番組がデマを報じたかのような投稿をおこなったことだ。
ところが、「デマ」を流していたのは番組ではなく厚労省のほうだった。昨日6日放送の『モーニングショー』が真正面から検証して反論した結果、厚労省側がツイート内容を自ら「訂正」したのである。
まずは事の経緯を整理しよう。4日放送の『モーニングショー』では医療現場でのマスク不足に言及。京都府保険医協会が会員を対象におこなった緊急アンケートでも病院の約9割がマスクが足りないという結果が出たことや、番組に連日ゲスト出演している池袋大谷クリニックの大谷義夫院長が、自身の病院でもマスク不足、とりわけ検体採取などの際に装着するN95マスクが足りなくなってきていることを紹介した上で、同じくゲスト出演していた岡田晴恵・白鴎大学教授が「まずは医療機関に配らなきゃだめです。みなさん欲しいのはごもっともなんですけども、医療を守らなくては治療ができませんから、医療機関、とくに呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていく(ことが重要)」と提言をおこなっていた。
だが、この放送の翌5日午前7時43分、つまり番組放送直前に、厚労省の公式ツイッターアカウントが、こんなツイートを連投したのだ。
〈3月4日午前8時からの「羽鳥慎一モーニングショー」の出演者から、「まずは医療機関に配らなければだめ。医療を守らなければ治療ができないから、医療機関、特に呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていく 」とのコメントがありました。〉
〈厚生労働省では、感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行ったほか、都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています。〉
〈最終的に全ての医療機関に十分なマスクが届くことが必要であり、引き続き、マスクの増産や全ての医療機関を対象とした優先供給を進めてまいります。〉
厚労省が直々に、番組名を名指しした上、岡田教授の発言をわざわざ取り上げて「感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行った」「日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用して優先配布の仕組みを知らせている」と喧伝する──。これははっきり言って、異常な情報発信であるだけでなく、その主張も言いがかりとしか呼べないシロモノだ。
前述したように、『モーニングショー』では医療現場でマスク不足に陥っているという医療従事者の声を中心に客観的事実を伝えただけ。実際、それはデマでもなんでもなく、3日には千葉市の熊谷俊人市長が「N95マスクなど医療用マスクが特に不足している」とツイートして寄付を募っていたほどの状況なのだ。だいたい、医療現場のマスク不足問題は『モーニングショー』だけが指摘していることではなく、他のワイドショーやニュース番組でも取り上げられている。なのに、厚労省はわざわざ『モーニングショー』を名指しし、医療機関全般の話を「感染症指定医療機関」の話にすり替え、まるで同番組がデマを流しているかのような投稿をおこなったのだ。しかも番組放送直前に、である。
だが、名指しされた『モーニングショー』は黙っていなかった。翌6日放送の番組内で、この厚労省のツイートを紹介した上で、番組がおこなった感染症指定医療機関への取材結果を報告。たとえば、北海道のある指定医療機関では「おととい1万枚納入された。1日3000枚使うので十分ではないがありがたい」と述べる一方で、神奈川県のある指定医療機関は「国からマスクは届いていない」と回答、東海地方のある指定医療機関も「今のところ優先されている感じはしない。今後支給するという通知もない」と回答を寄せたのだ。
厚労省はツイートで〈感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行った〉と断言したが、実際には医療用マスクが届いていない、通知もない指定医療機関があったのである。
そして、『モーニングショー』は5日夜、厚労省担当者に対し、こうした感染症指定医療機関への取材結果をもとに取材。すると、厚労省担当者はこう述べたというのだ。
「『マスクの優先供給を行った』については言いすぎた表現。『行っている』『開始した』が正しい」
さらに、〈都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています〉とツイートしたことについても、厚労省担当者は「訂正したい。そんなことは国会でも言っていない」と述べたという。
ようするに、厚労省は番組名を名指しして「デマ」よばわりしたが、実際は「デマ」を流していたのは自分たちだったことを、認めたのだ。