「クルーズ内感染は5日以前」という政府の弁明では説明しきれない感染
感染研の報告書によれば、18日までに発症日がわかった陽性の乗客184人のうち33人は客室待機が始まる前の5日以前に発症、6〜9日には89人(乗客79人、乗員10人)が発症。潜伏期間を考えると、客室待機が始まる5日以前に感染が一定程度広がっていたと分析している。
しかし、発症日が判明している人は3分の1以下にすぎず、検査時点で陽性だが無症状で下船した人が下船後発症したかどうかも明らかになっていない。これでどうして、5日以前の感染と言い切れるのか。しかも、発症日がわかっているケースでも、10〜15日に62人(乗客32人、乗員30人)が発症しているし、17日に99人感染者が判明するなど16日以降も感染者は増え続けている。いや、そもそも5日以前に船内にいなかった医療従事者や公務員に感染が広がっているではないか。これだけをとっても、客室待機後も感染が拡大したのは明らかだろう。
また、仮に厚労省が主張するとおり「感染は5日以前」「客室待機前に感染が広がっていた」というのであれば、それこそ、ただちに5日に全員下船させて検査を実施し、陽性と陰性にふり分けて、陽性の人は専門病院に入院、陰性の人は「ホテル三日月」のような隔離施設に移すべきだっただろう。
ところが、政府は5日朝から客室待機にしただけで、そうした措置をとらなかった。ホットスポットであるクルーズ船にそのまま患者を隔離してしまったのだ。
当たり前だが、ホットスポットと隔離施設はまったく違う。隔離施設はもともとウイルスに汚染されていない安全な場所に患者や感染可能性のある者を隔離するため、感染危険性のある場所をあらかじめ特定し、管理することができる。しかし、ホットスポットは感染者が多数発生した場所であり、どこに菌が潜んでいるかわからない。実際、「ダイヤモンド・プリンセス」号では4日の夜まで乗客たちは船内を自由に行き来し、シアターやダンスホールなどの共有スペースも使用されており、食事もビュッフェ形式で提供されていた。感染源が香港の男性1人なのかどうかも特定できない、という複数の専門家による指摘もあった。
政府はそんなところに、感染していない乗客も含めて長期間監禁したのである。