●事件簿その10
安倍首相もFBで拡散した差別サイト「保守速報」の運営者を公表する画期的動き! 一方、三浦瑠麗は「保守速報を禁じるならリテラも禁じるべき」
暗澹たる気持ちにさせられるが、そんななか年末、ネット上のヘイト問題をめぐって大きな動きがあった。大阪市が市のヘイトスピーチ防止条例に基づいて、在日コリアンへの差別を扇動してきた悪質サイト「保守速報」の運営者(栗田香氏)と、元在特会副会長で団体「朝鮮人のいない日本を目指す会」代表(川東大了氏)の氏名を公開したのだ。元在特会の川東氏については、以前からネトウヨ界隈で名の知れたヘイターだったが、もうひとつ注目すべきは「保守速報」の運営者情報が公表されたことだろう。
念のため説明しておくが、「保守速報」は匿名掲示板「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)の嫌韓や人種差別、政治ネタのスレッドなどを編集した「まとめサイト」で、これまで数えきれないほどのヘイトスピーチやヘイトデマを拡散してきた。サイト内にもコメント欄を設け、そこにもヘイトスピーチが多数書き込まれるなど、「単に2ちゃんコメントをまとめただけ」というレベルではなく、明らかに意図的かつ悪質なサイトだ。2017年には「保守速報」が抽出したネット上の差別的書き込みによって名誉を傷つけられたとして、在日コリアンのフリーライター・李信恵氏が損害賠償を求めて提訴。裁判所は「保守速報」の内容を「差別」に認定し、2018年12月には最高裁が「保守速報」に200万円の支払いを命じる判決を確定させたが、運営者情報はこれまで表沙汰になっていなかった。
その意味では、ネットの差別投稿を利用して広告収入等を得る悪質まとめサイトの運営者が今回、条例に基づいて氏名が明かされたというのは「画期的」と評価していいだろう。ヘイトを拡散してきたことに対する社会的制裁もそうだが、「ヘイトは処罰される」という事実をあらためて示したことで、匿名で差別投稿を繰り返す有象無象のネトウヨたちに対しても一定の抑止力になることを期待したい。
そんな「保守速報」だが、数年前、安倍首相がFacebookでそのまとめ記事を“シェア”していたことを覚えているだろうか。2014年11月、解散に疑義を呈したサイトを立ち上げたのが小学4年生でなく大学生のなりすましだった騒動で、安倍首相自らがまるで鬼のクビをとったようにこれを取り上げたのだが、その際に「保守速報」をシェアしたうえ、「選挙目当ての印象操作ではないでしょうが」などという解説を加えて、「民主党の陰謀」なるデマをそのまま垂れ流したのである。さすがに、この「保守速報」シェア事件については方々から批判が殺到し、あわててFacebookからシェア部分を削除したが、これはネットリテラシーの問題ではなく、安倍首相の本質が完全に「総理大臣になったネトウヨ」であるかを表していた。
なお、ネトウヨから「左の保守速報」なるレッテル貼りをされている本サイトだが、差別や人権侵害を徹底して批判しているのはもちろん、記事の引用元や運営者情報もきちんと明らかにしている。開設してから5年が経つが、名誉毀損で訴訟を起こされたことすら一度もない。差別を扇動するまとめサイトと同じにされるのはまったくの心外であり、それこそ名誉毀損で訴えてやろうかと思うくらいだが、まあ、ネトウヨたちの戯言だからと相手にしてこなかった。
しかし、あろうことか、あの自称国際政治学者・三浦瑠麗が昨年、『AbemaPrime』(2019年11月11日)で本サイトを名指しし、「『保守速報』禁じるんだったら『リテラ』も禁ずるべきですよね」と発言したことについては、本当に怒りを禁じ得ない(過去記事参照https://lite-ra.com/2019/11/post-5114.html)。しかも三浦は番組のなかで、文筆家の古谷経衡氏から「保守速報は賠償命令が出てて、リテラには賠償命令が出てないですよね。出てました?」と追及されると、恥ずかしげもなく「保守速報とか、まあリテラとかっていうのはほとんど読まないので」と逃走してしまった。ネトウヨのカキコミを鵜呑みにしたのかシラを切ったのかは知らないが「いいかげんにしろ」と言っておきたい。
いずれにしても、本サイトはこれからも差別の問題や、ネット上のヘイトデマの問題、ヘイトと地続きにある歴史修正主義の問題、そして、その震源地である安倍政権の極右排外思想を追及していくつもりだ。「どうあがいても人間社会から差別はなくならない」などと賢しげな顔でのたまう人たちもいるが、実のところ、それは「差別の容認」でしかないのである。徹底的に向き合わなければ、何ひとつ変わっていかないのだ。
(編集部)
最終更新:2020.01.07 07:04