あまりにずさんで拙速だった沢尻逮捕 組対5課を焦らせたものとは?
薬物事件の捜査は通常、入念な内偵をおこなって周辺を固めた上、確実に薬物を所持しているタイミングで逮捕するか、容疑者が所持・保管している現場を確実に把握した上で家宅捜索するもの。とくに、相手が有名人となると、慎重の上にも慎重を期するのが普通だ。
ところが、沢尻のケースでは、誤情報に基づいた声がけで空振りに終わっているにもかかわらず、家宅捜索を強行するというごり押しをしているのだ。しかも、おかしいのは内偵捜査期間の短さだ。報道では、今回、組対5課は1カ月前から沢尻を内偵捜査していたとしているが、同じ組対5課が逮捕したASKAは約9カ月、清原和博についても1年以上だ(麻取なので事情が違うかもしれないが、ピエール瀧も半年以上内偵されていた)。
それに比べると、今回は短すぎるだろう。沢尻が大河ドラマの撮影に入っていることを考えれば、早く動かないと海外に逃亡してしまうというような可能性も考えにくい。にもかかわらず、組対5課がこんなに焦って拙速な逮捕に踏み切ったのはなぜか。
今度は全国紙のベテラン警視庁担当記者がその内情をこう明かす。
「沢尻についてはもともと逮捕を前提に5課で内偵を進めていたが、途中で上層部から『早く結果を出せ』とはっぱをかけられていたようだ。捜査員の間からは『沢尻逮捕は組対部長案件だった』という声も出てきている。実際、普通はあれくらいのずさんな材料しかないなら、逮捕は絶対に課長か部長からストップがかかる。それがハードルを下げて、逮捕にGOを出しているわけだからね。理由はわからないが、上層部が逮捕を後押ししていたのはたしかだろう」
ここで想起されるのが例の「陰謀論」と批判を浴びた「『桜を見る会』から目をそらすために沢尻を逮捕したのではないか」という見方だ。本サイトは以前、この見方を「陰謀論」と批判する意見に対して、「事件そのものはでっち上げられないが、いまの安倍政権と警察の関係を考えれば、政権の都合に合わせて逮捕を早めた可能性はゼロではない」「疑念を持つのは当然で、むしろ陰謀論として片付けることのほうが思考停止だ」と反論した。また、沢尻を逮捕した警視庁組対部は、菅義偉官房長官の側近警察官僚で、山口敬之氏の逮捕状を止めた中村格・警察庁官房長がかつて組対部長を務めており、強い影響力をもっていることも指摘。さらに、その中村官房長が安倍首相の秘書の息子が被害者となったゲームセンターでの喧嘩を凶悪犯罪を扱う捜査1課に捜査させていたという問題を「週刊新潮」(新潮社)が報じたが、中村官房長の依頼を受けて組織を動かした警視庁捜査一課長が警視庁組対部の参事官をつとめていたことも明らかにした。