「レーダー照射」問題で関係を悪化させる「動画」を公開させた安倍
そんななか勃発したのが昨年末の「レーダー照射」問題だった。発端は韓国軍と自衛隊の間での偶発的なトラブルだったが、安倍政権はこれを“徴用工問題への反撃”の奇貨として、猛烈な韓国バッシングに利用した。安倍自民党の政治家は口をそろえて「日本への敵対行為だ」とわめきたてたが、しかし、レーダー照射問題がここまでこじれてしまった最大のポイントは、防衛省が韓国側の不意をつくかたちで動画を公開してしまったことにあった。この動画公開によって、韓国国防省は追い込まれ、あの反論動画という不毛な応酬を招き、両国政府の引っ込みがつかなくなる形で対立が激化したわけである。この動画公開は、安倍の“鶴の一声”で公開されたものだ。時事通信の報道によれば、防衛省は当初〈防衛当局間の関係を一層冷え込ませると慎重だったが、韓国にいら立ちを募らせる安倍晋三首相がトップダウンで押し切った〉〈複数の政府関係者によると、方針転換は(12月)27日、首相の「鶴の一声」で急きょ決まった〉という。
あらためて指摘しておきたいのは、安倍政権が知性的な外交感覚を持っていれば、「レーダー照射」問題は担当部署での話し合いにより、粘り強く調整を続けるという選択が妥当だったはずだ。にもかかわらず、安倍首相が動画公開を支持したのは、この問題で韓国政府を追いつめることで、徴用工問題を押し切ろうとしたからにほかならない。同時に、国内マスコミによる“嫌韓キャンペーン”に燃料を与えることで、政権の支持をとりつけようとの欲望もあった。実は、このレーダー照射問題が沸騰する間、文在寅大統領は徴用工問題で「政治的争点化」を避けたい希望を述べるなど、両国の関係改善の糸口を模索する動きもあったのだが、安倍首相のほうがそれを反故にしたわけである。
そして、安倍政権は今年、参院選での争点隠しのために、韓国への輸出規制を発表、次いで「ホワイト国」から除外した。韓国側はこれを「経済侵略」ととらえたが、それは誇張ではない。何せ、安倍は一連の輸出規制を、明らかに韓国経済に打撃を与えようとの意図のもとで行っているからだ。日韓関係はもはや“武器を使わない戦争”への第一歩を踏み出してしまったのである。
いかがだろうか。こうして冷静に振り返ってみれば明らかだろう。韓国側のGSOMIA破棄を呼び込んだのは、安倍による醜悪な歴史修正主義と韓国への責任転嫁の破滅的な積み重ねだったのだ。