長谷川「最新の学説では差別の歴史がなく、教科書からも削除」のデマを
長谷川氏のブログにはもうひとつ、看過できないことがある。それは部落差別の歴史について、新たなフェイクをとばしていたことだ。長谷川氏は自分の発言が「切り取り・編集」であるとしたあと、こう続けている。
〈間の悪いことはもう一つありました。
僕らの世代は、小学校などで(僕は道徳の授業でした)江戸時代に暗い差別の歴史があった、と習いました。4段階の身分制度(士農工商)。そして、その下に被差別階級があった、と。
実は日本ではその歴史自体が、なかったのではないか、と。
その認識は間違っていたのではないか、と。
最新の歴史の教科書では、実はそんな歴史認識自体が間違っていた、というのが最新の学説となっており、子供たちの教科書から、その差別の歴史の記述自体が無くなっているのです。
僕はそれを知りませんでした。
僕は神話の時代の話でもするように「小学校時代に習いましたね」「差別の歴史があったってね」そう語っていたことは事実でした。〉
つまり、長谷川氏は“士農工商の身分制度の下に被差別階級があるという認識は最新の歴史教科書では間違っているとされているが、自分はそれを知らなかっただけだ”と言っているわけだ。
はっきりいうが、これはミスリードである。たしかに、江戸時代の身分序列について、従来、「士農工商」と言われてきたものについては、実際の呼称や序列とは異なっていたとされる。だが、それは「士農工商」の話であり、〈被差別階級〉の存在が否定されているわけではない。
実際には、代表的なものとして皮多(かわた)/長史や「非人」などの被差別民が存在した。皮多は主に皮革業を生業とし、「非人」は戦乱や生活苦で都市へ流入してきた人々を中心に編成されたと考えられている。『入門 被差別部落の歴史』(寺木伸明、黒川みどり/解放出版社、2016)によれば、〈徳川氏もその他の大名も、多くの場合、皮多/長吏身分や「非人」身分の人々を組織化し統制していこうとしていた〉。被差別民の把握や身分登録、さらに死牛馬処理にかかわる穢れ視を強めて差別感を増幅したり、百姓・町人との交流に規制を加えるなどの差別政策がとられた。