ママインフルエンサーを使った“ステマ”まがいの戦略まで
さらに、問題なのは、電通が国や自治体からのカネを元手に行ったPRが、まさに“代理店的”な手法に満ちていることだ。野池氏の請求によって公開されたものの一つに、「平成30年度 放射線等に関する情報発信事業」という資料がある。これは、電通が復興庁に送った実施PR事業の報告資料だ。
見ると、電通がありとあらゆるメディアやチャンネルを使って「風評被害」を打ち消すための戦略を実行していることがわかる。テレビCM(地上波36局、BS4局。2019年2月)はもとより新聞広告、Tver、映画館や電車内、産婦人科病院待合室のモニターでのCM、さらに日本医師会会員や全国自治体に配布するリーフレット、ウェブ動画やポータルサイトの開設から、果てはLINEスタンプまでもが戦略に含まれていた。
しかも、これらのPRは明確に広告代理店的手法をとっている。たとえば、映画館でのCMは映画「ドラえもん のび太の月面探査記」を上映した劇場(49劇場、CM上映4069回)でのもの。資料内でこのドラえもん映画を〈春休みに親子で楽しめる話題作〉と強調しているように、明らかに「母親層」「父親層」にターゲッティングされているのである。
とりわけ同報告資料のなかで目を引くのは、〈有識者・専門家・ママインフルエンサーによる座談会〉なる項目だ。これは、2019年2月2日に三菱総合研究所で開催された座談会で、「ママインフルエンサー」なる女性らが参加、社会学者の開沼博氏が講師を務めた。「ママインフルエンサー」5名は「合計フォロワー数45975人」と記されている。内容は〈(福島の現状を)知る事が復興支援になるという理解促進〉などとされており、その模様は編集されて日経新聞に復興庁名義で掲載された。