電通の戦略でTOKIOを「キーメッセンジャー」に
こうした計算の上で仕組まれた「キーメッセンジャー」がTOKIOだったというわけだ。「安心メディア発信研究会」の第2回議事録(2012年7月13日)では、地元マスコミの営業・広報担当者たちが「TOKIO起用はよかった」「ダッシュ村の影響もあり、農業系アイドルなのでよい」「ビールも似合うTOKIOが桃もおいしく食べている姿が良い」「TOKIOはジャニーズでも年齢層が高く、大人の安心感が感じられる信頼感が伝わる」などと口々に絶賛している。
いずれにせよ、今回、明るみにでたのは、国や自治体が、原発事故後の「風評被害」対策や「食の安全・安心」PRを電通に丸投げし、少なくとも240億円という莫大なカネをつぎ込んできたというグロテスクな事実だけではない。
福島第一原発の事故以前、電力会社などの“原子力ムラ”は、露骨な“安全神話”を振りまく大量の広告出稿によってマスメディアの口を塞いできた。だが、そうした電力業界のやり方や、広告に起用されてきた“原発文化人”にも大きな批判が集まり、“原発広告”はどんどん巧妙化していった。原発広告への電通の大きな関与は以前から指摘されていたが、この広告代理店的手法が、PRに隠された“新たな安全神話づくり”を見えづらくさせている。それが、あらためてはっきりとしたのである。
問題なのは、今回の「たぁくらたぁ」による情報公開請求と、それを分析して報じた「OurPlanet-TV」の報道を、テレビや新聞などのマスコミがまったく後追いしようとしないことだ。それは当然、自分たちも原発広告に加担する“共犯者”であると同時に、マスコミにとって電通は最大のタブーだからだろう。しかし、そうして見てみぬフリをしてきたことが、あの未曾有の原発事故を招いたのではなかったか。原発事故後の巨額PRと電通の関係を、徹底して検証せねばならない。
(編集部)
最終更新:2019.05.31 08:18