津原泰水が「誰が文句言ってるの? 見城さんなの?」と問うと、幻冬舎編集者は…
たとえば、幻冬舎側が主張するように、津原氏から「お互いの出版信条の整合性がとれないなら、出版を中止して、袂を分かとう」と言ったのか尋ねると、「そんなことがある訳ないじゃないですか」と明確に否定した。
「そもそも『出版信条』なんて言葉を僕は使いません。出版社じゃないんだから。作家なら『執筆信条』あたりですが、文庫化なんだから『推敲信条』? 作家がそんなことを言うわけがないですよ。(日頃から)信条、信条と発言されるのは見城(徹・幻冬舎社長)さんですよね? 4月刊の本で1月といえばゲラが大詰めを迎えて、イラストレーターから仕事もカバーが上がっている段階で、仮に『袂を分かつ』なんて言い出したら、僕もですけど幻冬舎側も大損なんです。『はい、そうですか』と引き下がってくれるわけがない」
津原氏は本サイトに対して“文庫出版中止”となった経緯を詳細に語った。幻冬舎側が「担当編集者として『さすがにこれは困ります』という旨、ご連絡を差し上げたのが年初」と主張している点について、津原氏はこう説明する。
「1月8日になって、急に担当編集者からそういう話をされました。旧年中は一緒に食事をしながら『なに考えてんでしょうね』なんて笑っていたにも拘わらず、です。朝、メールが入っていて、進行中だったゲラのことに加え、〈津原さんのツイッターについても……。社内でも「どうしてここまで」と白い目で見られ、私も肩身が狭く居心地が悪くなってきました。窮状をお察しいただき、一度、お話できないかと思っています〉とあった。久々に携帯電話を確認したら、すごい数の着信履歴で、これはただごとではないと思ってかけると、重たい口振りで、『じつは社内でですね……津原さんの……まあツイッターでの……』ともごもご言っている。『なにかまずいこと書いたかな?』と尋ねてもはっきり答えない。『日本国紀?』と訊いたら『ええ……まあ』。でも『僕はどうすればいいんですか?』と訊いても、言葉を濁されるばかりで埒が明かないんですよ。はっきり『批判をやめろ』と言えば強要になると思ったからでしょうか。仕方なく『誰が文句を言ってるんですか? 見城さん?』と問い詰めたら、『まあ営業の……』『営業の誰?』『営業の……部長です』と」
同日、この電話の後、担当編集者から送られてきたメールには〈会社に来て、いろいろ考えてみましたが、『ヒッキーヒッキーシェイク』を幻冬舎文庫に入れさせていただくことについて、諦めざるを得ないと思いました〉と書かれていた。つまり、事実上、1月8日には担当編集者から“文庫化中止の通達”がなされていたことになる。
津原氏によれば、幻冬舎に正式に契約更新をしない旨の通知をおこなったのは2月22日。担当編集者からの返信のメールには、1月8日を振り返っての〈実際に社内でこの作品(引用者注:『ヒッキーヒッキーシェイク』)に味方する人はもういないと考え〉との文言もあったという。津原氏の担当編集者もまた、幻冬舎内で孤立していたことは想像に難くない。