国連グテーレス事務総長の発言まで捏造した安倍政権
自分たちの失態を隠すために、国際機関の報告書まで捏造して国民に虚偽の説明をおこなう──。公文書を改ざんしてしまう政権とはいえ、国際社会での事実についてまでよくも嘘を平気でつけるものかと驚くほかないだろう。
しかも、こうした安倍政権の国際問題での捏造は、この件にかぎったものではない。
たとえば、共謀罪法案が審議されていた2017年には、安倍政権は共謀罪に懸念を示していた国連人権委員会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏の公式書簡を猛批判していたが、G7サミットにあわせて安倍首相がアントニオ・グテーレス国連事務総長と懇談をおこなうと、その内容について、外務省はこう公表した。
〈安倍総理から慰安婦問題に関する日韓合意につき,その実施の重要性を指摘したところ,先方は,同合意につき賛意を示すとともに,歓迎する旨述べました。
さらに、安倍総理から,国際組織犯罪防止条約の締結に向けた日本の取組につき説明しました。この関連で,先方は,人権理事会の特別報告者は,国連とは別の個人の資格で活動しており,その主張は,必ずしも国連の総意を反映するものではない旨述べました。〉
グテーレス事務総長が2015年末の日韓合意に賛意と歓迎を示し、ケナタッチ氏の件も「国連とは別の個人の資格で活動している」と明言した──。こうした政府説明を国内メディアもそのまま報じ、それによってネトウヨたちは「国連も日韓合意を歓迎」「国連の総意ではなく個人のスタンドプレーだったことが判明」などと騒ぎ立てた。
しかし、このグテーレス事務総長の発言内容も、安倍政権の捏造だった。その後、国連のデュジャリック報道官は「慰安婦問題は日韓の合意により解決されるべき事案との点に同意した」が、「特定の合意の中身についての見解は示さなかった」という談話を発表し、「(2015年末の)日韓合意に賛意」を示したという日本政府の説明を否定したのだ。しかも、特別報告者についても、安倍首相には「独立した専門家で、国連人権理事会に直接(調査結果などを)報告する」という内容を伝えたとした(朝日新聞2017年5月30日付)。「国連とは別の個人の資格で活動している」という日本政府の説明と、「独立した専門家」では、まったく意味が違う。
ようするに、安倍首相と政府は国連事務総長の発言を歪め、慰安婦問題の対応や共謀罪の正当化に利用したのである。