『ワイド!スクランブル』は「ピュア」「人の話を聞く」
こちらも菅官房長官の苦労人エピソードを紹介し、末延吉正・元テレ朝政治部長は「ピュアな感じっていうのが一気に出てきた」「つらいことを経験しているからこその優しさ」などと歯が浮くような言葉を並べ立て、太田昌克・共同通信編集委員までもが「本当に叩き上げで人様の苦労がわかっている人に政治をやってほしいんですね」と言い出す始末。
これにはメインMCの大下容子アナウンサーも「ちょっとここはっていうところはないんでしょうか? いままで全部いい話ばかり」と苦言を呈したが、末延はそんな話は聞いていないかのように「かつてはナンバー2にいる人が力をつけると不協和音が出た。でも、出ないところが安倍、菅2トップのすごいところ」などと“安倍・菅コンビすごい!”に終始したのだった。
だが、もっとも目がテンになったのは、番組が紹介した自民党・平沢勝栄議員の言葉だ。菅氏と平沢氏は初当選同期の関係だが、番組では平沢議員による菅氏の印象をこう紹介したのだ。
「裏方に徹する 絶対に裏切らない 口が堅い ひたすら尽くす いろんな人の意見を聞く 自分ではしゃべらず徹底して聞き役になる 安倍さんは後ろを振り向かずに1人で突進する場面があるが、抑え役としては最高のコンビ」
菅官房長官が「いろんな人の意見を聞く」「徹底して聞き役になる」って、冗談じゃない。ご存じのとおり、菅官房長官は東京新聞の望月衣塑子記者の質問に対して「あなたに答える必要はありません」などと言い放ち、2017年には「ここは質問に答える場所ではない」とも発言した。気にくわない相手の話はハナからシャットアウトするのが菅官房長官ではないか。
しかし、『ワイド!スクランブル』にしても『ひるおび!』にしても、こうした菅官房長官の回答拒絶や官邸の記者排除問題には一切ふれずじまい。加計学園問題で「総理のご意向」文書を「怪文書」呼ばわりをして実在した文書をないもののように語ったことはもちろん、前川喜平・元文科事務次官のことを「前川氏は当初は責任者として自ら辞める意向をまったく示さず、地位にレンメン(編集部注・おそらく「恋々」の間違い)としがみついていた」などと虚偽の情報で人格攻撃したことにも言及しなかった。