石野卓球のツイートはピエール瀧逮捕をめぐる日本の異常性を突いたもの
ましてや、ピエール瀧の場合は被害者のいない薬物事犯だ。「同じグループに所属する者」が、いったい誰に何を謝罪する必要があるのか。
ワイドショーでは「仕事上、多大な迷惑をかけているのに」などと言っていたが、ライブ中止や販売中止、撮り直しなどという過剰な対応のほうこそが問題なのであって、石野が謝るような話ではないだろう。
石野卓球に謝罪を要求している者たちが主張していることは、つまるところ、「他のみんなはそのようにしているのだから、お前もそうしろ」という同調圧力の強制でしかない。
石野卓球のツイートは、皮肉や毒気に満ちたブラックユーモアでありながら、まさに今回の事件によって起きているこうした事象に対して、本質的な問いをぶつけているものだ。
〈電気グルーヴは出荷停止だけど石野卓球ソロは売ってる(容疑者がいないので)〉というコメントつきで小売店やストリーミングサイトのURLを貼ったツイートは、事件を受けて電気グルーヴの作品を流通できなくさせた音楽業界への疑問だ。
また、〈容疑者部分をカットして撮り直し〉のコメントでベルリンの写真を撮り直したツイートも、ピエール瀧出演部分に代役を立てて撮り直しをしているテレビ業界や映画界への疑問である。
悪ふざけではあるが、何の考えもなく悪ふざけをしているわけではない。彼のツイートには、悪ふざけを通じて伝えようとしている確固とした思いがある。
26日、宇川直宏主宰のライブストリーミングサイト・DOMMUNEは「電気グルーヴ“だけ”の5時間!電気グルーヴ“だらけ”の300分!」と題し、電気グルーヴの楽曲をかけるDJイベント企画を放送した。DJ WADA、KEN ISHII、SUGIURUMN、Licaxxxといった著名なDJが参加したこの放送は大反響を呼び、日本のツイッターではトレンド1位になり、46万人以上の視聴者が集まった。
それを受けて石野卓球はDOMMUNEのツイッターアカウントに〈宇川くん、WADAさん、イシイくん、Licaxxx、スギちゃん、そしてViewerのみなさん、本当にありがとう!心から感謝〉とリプライを送り、放送に関わった人たちに感謝を述べた。
これこそが「自分の頭で考える」メディアの批評性であろう。
坂上をはじめとしたワイドショーのコメンテーターは「なぜピエール瀧の関わる作品が自粛しなければならないのか?」「なぜ石野卓球が謝罪しなければならないのか?」ということへの論理的な説明ができるだろうか。おそらく「みんなもそうしているから」以上の説明はできないだろう。
今回のピエール瀧の騒動は、地上波テレビを始めとしたオールドメディア(ラジオは除く。TBSラジオを筆頭に、この件に対してラジオの報道は真摯である)のどうしようもなさを改めて浮き彫りにしている。
(編集部)
最終更新:2019.03.28 03:05