本日、いままで公開されてこなかった検討会の後半3回分の議事録がようやく公開されたのだが、2015年8月7日におこなわれた検討会の第5回会合では、座長である阿部正浩・中央大学教授がはっきりと「検討会の方向性としては、総入れ替え方式で行うことが適当であるということにさせていただければと思います」とまとめている。つまり、中江首相秘書官が述べた「改善」ではなく、現状の総入れ替え方式でという方針が出されたのだ。
ところが、9月16日の第6回会合では、姉崎統計情報部長が議論をひっくり返すように、こう述べている。
「サンプルの入れ替えのところで総入れ替え方式ではなく、部分入れ替え方式を検討したい」
そして、姉崎統計情報部長は「また検討会を開催させていただくことになるかと思っておりますので、その際にはまたよろしくお願いします」と言いながら、結局、それがおこなわれることはなく、検討会はフェードアウト。
さらに、この第6回会合からちょうど1カ月後の10月16日、安倍首相が議長を務める「経済財政諮問会議」において、麻生太郎財務相が「毎月勤労統計については、企業サンプルの入替え時には変動があるということもよく指摘をされている」「ぜひ具体的な改善方策を早急に検討していただきたいとお願いを申し上げる」と指示。この鶴の一声によって政治主導の統計改革がはじまり、賃金がかさ上げされる調査手法へと変更が進められていくことになるのだ。
次々にあきらかになっていく、「アベノミクス偽装」に向けた官邸と安倍首相の関与。安倍首相は13日の衆院予算委委員会で追及を受けた際、「この年、2015年って何があったかというと、平和安全法制ですから。私、1000問質問を受けてるんですよ? これ以外は持ってこないでという状況ですから。そこで統計サンプル入れ替えどうのこうのって、私がそんな関心示すわけないじゃないですか」とシラを切ったが、むしろ、安保法制の強行採決によって内閣支持率が下がることが必至だった安倍首相にとって、経済政策で点数を稼ぐ必要に迫られていたことは事実だ。
ともかく、「首相案件」という恫喝によって官僚から忖度を引き出した加計学園問題と同様、この「アベノミクス偽装」がおこなわれた可能性は非常に高くなってきた。中江首相秘書官は森友公文書改ざん問題でも“今井尚哉首相秘書官の意向を本省に伝えていた人物”として名が取り沙汰されたが、今回の問題では一体、どんな圧力が官邸から厚労省にかけられていたのか、今後さらに解明が必要だ。
(編集部)
最終更新:2019.02.18 09:56