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BTS問題のヘイト的本質とファンダムの新しい力(後編)

BTSファン「ARMY」がスゴイ! ネトウヨの差別攻撃にもメディアの嫌韓にも負けず、国境を超える連帯と勇気

秋元康コラボ、女性蔑視歌詞…ARMYの声がBTSを変えた

 しかも、ARMYはたんに、BTSの活動を支えるだけでなく、その表現をブラッシュアップする役割も果たしてきた。BTSの向かう方向性にARMYが疑問を感じたときは遠慮なくその不満をぶつけ、そういったファンの行動がBTSの動きを変えてきたのだ。

 その典型が2015年末から2016年の夏にかけて起きた炎上だろう。「ホルモン戦争」の〈女は最高の贈り物だ〉や、「Can You Turn Off Your Phone」の〈食事を目で食べるっていうのか? 女みたいに〉といった歌詞が女性蔑視的であるとして、ファンからSNSなどを通じて異論が噴出したのだ。

 これを受け、事務所は謝罪に加えて〈今回自主検討と論議を通じて、音楽創作活動は個人の成長過程と経験、そして社会から見て学んだことの影響を受けるため、どのような社会の偏見や間違いでも自由にはなれないことを学ぶこととなりました。また社会での女性の役割や価値を男性的な観点にて定義しようとすることも正しくない可能性があることを知りました。(中略)今後も継続して防弾少年団の成長を見守っていただき、不足している点について指摘していただければ、より努力する姿でファンと社会の助言に耳を傾けます〉(2016年7月6日付ニュースサイト「もっと!コリア」)とコメントを出した。

 ただテンプレートの謝罪を出すだけにとどまらず、騒動を受けてミソジニーへの真摯な反省を自分たちなりの言葉で発信する対応は、多くの人々を驚かせた。「アイドル」と「ファン」の間で完璧に意見の交換が成り立っている関係性は、他のグループではなかなかつくれるものではない。

 これは少し前の秋元康とのコラボ中止騒動においても同様だ。ファンはインターネット上で意見を述べるばかりではなく、事務所のビルにコラボ中止を要請する付箋を貼り付けるなどの見事な非暴力抵抗行動を起こした。

 今回の「原爆Tシャツ」問題をめぐるバッシングに対してARMYたちが堂々と反論、抵抗しているのは、自分たちがBTSを盲信してきたのでなく、「いけないことはいけない」と声を上げてきたという自負があるからだろう。だからこそ、BTSの軽率さについては諌めながらも、問題の本質を見抜き、バッシングに「NO」の声を上げることができるのだ。

 しかも、ファンダムはただ、バッシングに「NO」を叫んでいるだけではない。ヘイトを乗り越える新たな“連帯”の芽になろうとしている。

 徴用工問題などをめぐって、激しい憎悪と差別が飛び交い、これまでにない分断が進行しているネットにあって、日韓のARMYの周囲には180度ちがった光景が広がり始めているのだ。

 たとえば、BTSが「韓国バッシング」の道具にされていることを指摘した本サイトの記事を翻訳した韓国のファンに対して、日本のファンが〈韓国語に翻訳してくれてありがとうございます 日本のarmyもくやしいです。もっとひろめてください。BTSをまもりたい〉とリプライし、そのリプライを見たまた別の韓国のファンが〈日本のarmyですか? あなたはとても優しいんですね。私たちはあなたを愛しています。いつもBTSの側にいてくださってありがとうございます〉(編集部訳。原文は英語で書かれている)と返信するというやりとりがあった。

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