安倍首相の外交を礼賛し続けた稲田の支離滅裂な世界情勢認識
まったくよく言うよ、だろう。日中関係の悪化は、第一次安倍政権以降、安倍首相が無用に中国を刺激しつづけてきた結果ではないか。稲田議員自身も、防衛相だった2016年に靖國神社を参拝し、中国から猛反発を受けている。それが、いざ安倍首相が日中関係の見直しに動くと「最善を尽くしてきた」と言うのだから、開いた口が塞がらない。
しかも、これまでさんざん中国脅威論を振りまき、憎悪を煽ってきた張本人であるのに、安倍首相が日中会談に臨んだ途端、中国については口をつぐみ、その分の憎悪を北朝鮮と韓国に向け始めた。北朝鮮に対しては「核廃棄の見通しは立たず、日本海を隔てたすぐそこに我が国を射程に入れた数百発もの弾道ミサイルを、いつでもどこでも発射できる状況だ」と煽りに煽り、韓国に対しては、先の海上自衛隊の旭日旗掲揚問題や、30日、韓国の大法院で判決が言い渡される徴用工問題、さらに竹島への議員上陸問題を立てつづけにもち出し、韓国を非難したのだ。
「外交の成果」とやらを強調する一方で、外交の足を引っ張っているとしか思えない、侵略の歴史を顧みない一方的な韓国への避難……。その上稲田議員は「総理の掲げる秩序による平和と繁栄の理念は、確実に世界に拡がっているのです!」などと外交成果を誇っていたにもかかわらず、舌の根も乾かないうちに、アメリカと中国の名をあげて「我が国を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増している」と言い出し、挙げ句、「いまこそ自分の国は自分で守る気概をもつべきです」と声高に叫んだのだ。
稲田議員の頭のなかの世界情勢がどうなっているのか、さっぱり意味がわからないが、ともかく、稲田議員が過去に発言した「自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならないのです!」という考えはまったく変わっていないらしい。
だが、もっとも強くツッコまずにいられなかったのは、憲法改正に話題が及んだ際の発言だろう。稲田議員は9条への自衛隊明記という安倍改憲論に対し、こんなエピソードを口にしたのだ。
「私も防衛大臣時代に南スーダンを視察しましたが、気温50℃を超える灼熱の地で黙々と道路や施設を補修する自衛隊員の姿は、現地の人びとから、世界から、称賛されていました。自衛隊の、現地の方々に寄り添った、誠実で、丁寧で、親切な活動は、まさに日本らしいものとして誇りに感じます」
南スーダンをめぐっては、自衛隊の宿営地も危険に晒されていたことが報告されていたのに、それを隠蔽し、新たに駆けつけ警護の任務に就かせたのは稲田防衛相だ。なのに、そんな事実はなかったかのように自衛隊の現地支援だけを取り出し、「日本らしい」「誇り」と美談に仕立て上げてしまうとは。恥知らずとはこのことだろう。