第1話では性的被害にあった女子が受ける理不尽な視線への批判が…
「いやーあんな短いスカート触りたくもなるだろ」
「結局さぁー男に媚び売るために履いてんだろ? スカートなんかさー 説得力無ェんだよ そんなの触られて当たり前」
これを聞いて神山は激怒。男子のうちのひとりに詰め寄り、ネクタイを引っ張り上げながら、憤怒に燃えた冷たい表情でこう言い放つ。
「スカートはあんたらみたいな男のために履いてんじゃねえよ」
ところが、被害者である長栖は、まったく逆の行動をとる。男子生徒の手を握りながら「ホントに恐かったんだからぁ〜っ 今度そういう事言ったらおこるよっ」と笑顔で語りかけ、周囲にも努めて明るい表情で「もーっみんな大げさっ! たかが太ももだよぉ!?」と愛想を振りまいたのだ。
そして、対照的な二人を見ていた男子からは「さっすが美玖ちゃん優しーっ どっかの男女さんとは大違いっスわ やっぱモテるのはあーいう子だよなーっ」という声が上がる。
このシーンは、日本の女性がいま、おかれている状況を象徴しているといっていいだろう。セクハラや痴漢などにあった女性は被害者であるはずなのに、その被害を告発すると、とたんに日頃のおこないや服装をあげつらわれ、「そんな格好をしているからだ」「そんな夜に出かけるからだ」など攻撃を受ける。そして、セクハラや痴漢を受け流して、やり過ごすことのできる女性が「できる女」「性格のいい子」としてもてはやされる。
しかし、受け流している女性たちもけっして「たいしたことがない」と思っているわけではない。同じ怒りが渦巻いているにも関わらず、男社会のなかで生きていくにあたり、男の論理を内面化してしまったにすぎない。ある意味、ストレートに怒りを告発できる女性よりも、心の奥底ではもっと深く傷ついているケースもある。
ところが、現実には、女性のなかで “男を告発する女”と“男に媚びる女” に二分化、“女と女の戦い”に矮小化され、分断と対立だけがどんどん進んでいっている。
『さよならミニスカート』はたった1話で、そうした女性の生きづらさをみごとに表現したのだ。