「生産性」と対極にある「あさやけベーカリー」のホームレス支援
以前本サイトでも報じたが、渋谷区がLGBTフレンドリーな施策を講じる一方でホームレスを排除するような施策をとるなど、ホームレスや貧困者は多様性を尊重するダイバーシティ政策からも疎外されているケースが往往にしてある。その背景のひとつには、マーケティングに結びつくかどうか、利益を生むかどうかという視点があるだろう。ようは「生産性」だ。
しかし山田さんの「あさやけベーカリー」は、「生産性」や「効率」とは対極にある。
〈一般的には、誰が何を担当するか分担をはっきりと決めたほうが、作業がスムーズに進むと思うが、あさやけベーカリーではあえて担当は決めていない。そのときにいるメンバーで、やりたい人ができることだけをする。だから、大きな責任がかからない。
その日になって「行きたくないなあ」と思えば来なくてもいいし、遅刻しても構わないし、早退してもいい。そのゆるやかな感じの中で、自分の意志で来るかどうかを決められるところもうまくいっている秘訣だと思っている〉
〈パンのことだけを考えると、もっと難しいパンに挑戦し、販売の機会を増やして彼らの収入を増やすという手もあるかもしれない。しかし、販売用のパンとなると、ある程度の技術がある人じゃないと務まらない。そうなると、彼らもストレスになってしまうし、メンバーがどうしても固定化されてしまい、新しい人を受け入れる余裕がなくなり、本来目指している活動とは少し違ったものになってしまう〉
そこでは〈支援者も当事者も、みんなフラットな関係〉だ。
〈あさやけベーカリーのみんなにとっても、僕にとっても、自分の居場所があるというのは大事なことで、それに加えて自分の存在が誰かの助けになっているという実感が、何よりも自分を支えてくれた〉
ホームレスをはじめ疎外された人々をコミュニティがどう包摂していくか。どうすれば彼らが居場所や役割をもてるか。貧困は自己責任だという考えが跋扈している今の日本社会で、その課題に向き合い続ける山田さんの活動から学べることは非常に多い。
だからこそ、『24時間テレビ』でも、ホームレス支援についてももっと掘り下げてくれたらとよかったと思うのだが……。
ちなみに山田さんと活動をともにしている「世界の医療団」ツイッターアカウントによると、今回の『24時間テレビ』でのリフォーム企画について、「パン焼きメンバーも、リフォーム後のお宅でパンを焼くのを今か今かと楽しみにしています」という。
もともとヒロミのリフォーム企画をやっている『有吉ゼミ』(日本テレビ)でもいいから、ぜひ続編を放送してもらいたい。
(編集部)
最終更新:2018.08.27 06:44